#968 追悼 長尾精一先生
製粉振興会元参与の長尾精一先生が、令和7年6月1日にご逝去されました。謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
長尾先生は大手製粉会社をご退職後も、(財)製粉振興会参与として製粉産業の発展に大きなご尽力をされました。製粉に関する著書も数多く、業界における第一人者であったことは誰もが認めるところです。理論のみならず不思議なことに生産現場にも精通され、著書を通じて多くを学ばせていただきました。また、些細な質問にも気さくにご対応くださったこと、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
先生が講師を務められた製粉振興会恒例の「製粉講習会」は、毎年楽しみにしていた行事の一つでした。世界の小麦事情や製粉産業界の一年を振り返り、主要な出来事を簡潔かつ分かりやすくご解説くださいました。「今年もこうして皆さんの前でお話しできることを嬉しく思います」とのご挨拶から始まる講演には、いつも力をいただきました。今となっては懐かしく、思い出深いひとときです。
弊社サイトの新着情報におきましても、先生のお話や著書を数多く参考にさせていただきました。検索するだけでも以下のような記事が見つかり、改めてその大きなご功績に思いを致すとともに、心より感謝と哀悼の意を表します。
①#921 小麦の話(西川浩三・長尾精一共著)2024年9月9日
本書「小麦の話」は、前半の小麦については西川先生が、そして後半の小麦粉については長尾先生が担当されています。かなり昔の本ではありますが(1977年刊)、後半部分から個人的に参考になった点をまとめてみました。
②#912アミログラフ・・・でんぷんの糊化特性 2024年6月30日
小麦でんぷんの糊化現象における粘度曲線に登場した用語を復習しました。
糊化開始温度、最大粘度、最大粘度温度、ブレークダウン粘度など。
③#563 2017年製粉講習会・・・変化する原料事情と消費動向 2017年3月21日
7.5億tの小麦のうち、貿易に回るのは全体の22%にあたる1億6800万t。輸出余力が大きい順に、①ロシア(2850万t)>②EU(2590万t)>③アメリカ(2570万t)>④オーストラリア(2300万t)>⑤カナダ(2100万t)>⑥ウクライナ(1500万t)>⑦カザフスタン(890万t)>⑧アルゼンチン(870万t)。
④#514 2016年製粉講習会・・・世界の小麦の流れ 2016年3月14日
小麦の生産は年々伸び、3年連続7億t超の小麦が生産されそうですが、耕作面積はほぼ限界に近づき、今後はGM小麦(遺伝子組み換え)でも出現しない限りこの辺りが上限であろうと言われています。7億tのうち食用にまわるのは4.84億tなので、世界人口72億人で単純に割り算して、一人当たり67kg。
⑤#501 2つの質問・・・「小麦粉の種類」と「旨味成分」 2015年12月7日
Q1外国と日本の小麦粉の特徴の違いについて教えてください
Q2小麦粉の旨みというのは、どこからくるのでしょうか
⑥#465 2015年製粉講習会・・・世界の小麦生産量など 2015年3月7日
1.小麦の生産量の推移
2.遺伝子組換え小麦(GMW= Genetically Modified Wheat)
3.二次加工業界の動向
⑦#418 製粉業を巡るグローバルな動き 2014年3月15日
1.再編が進む世界の製粉業界
2.世界の小麦生産量とその輸出量
⑧#382 小麦の品質変化・・・熟成の必要性 2013年6月14日
1.収穫直後の小麦は使いにくい
2.水分が少なくて条件が良ければ長期間貯蔵可能
3.高水分が貯蔵の大敵
4.貯蔵条件と保存可能期間
⑨#357 製粉と小麦粉のお国ぶり 2012年12月7日
20ヶ国の小麦粉生産量と製粉工場のまとめ。
⑩#111 うどんに塩を入れる理由 2007年11月11日
1.グルテンを引き締める
2.酵素の活性を抑制する
3.ゆで時間の短縮化
4.保存期間の増大
5.乾燥の防止
⑪#080 ゆでる前のうどんは、時間が経つとなぜ黒くなるのか? 2007年3月29日
この原因は、小麦粉の中に含まれているポリフェノール・オキシターゼ(Polyphenol Oxidases、以下PPO)という酸化酵素が空気中の酸素にふれて活性化するためです。簡単に言うと、生地が酸化して変色するのです。