#465 2015年製粉講習会・・・世界の小麦生産量など

f465新着情報#418でもご紹介しましたが、私達の業界では年に一度、製粉講習会なるものがあり、そこでは過去一年間に起きた製粉業界の出来事をコンパクトにそして分り易く説明してくれます。講師はお馴染みの長尾精一先生で、今回のタイトルは「製粉を取り巻く環境変化への海外企業の対応」。「今年もこうやって健康でいることができ、皆さんの前でお話ができることは大きな幸せです」という御挨拶で始まる長尾先生は、いつも肌艶良好、矍鑠とされていて、拝聴する私達も元気をいただきます。さて今回も独断ではありますが、気になったことを簡単にまとめてみました。

【1】小麦の生産量の推移
世界の小麦生産量は、10年前は6億t程度であったものが、ここ2年続けて7億tを超えました。現在世界人口を72億人とすると、非常に大雑把ですが一人あたり年間97kgということになります。生産量がダントツに大きい国は中国(1億2600万t)とインド(9600万t)で、この二国だけで世界の30%以上を生産していますが、人口も中国(13.6億人)、インド(12.2億人)と二国で、世界人口の36%にもなります。中国とインドは現在のところ小麦に関しては、ほぼ自給自足できていますが、もし輸入するようなことになれば、人口が人口だけに、世界の小麦の需給バランスに大きな影響を与えることは間違いありません。

7億tの小麦のうち、貿易に回るのは全体の20%程度の1億5000万t。輸入国は沢山あり、日本は年間600万t程度を輸入しています。輸出国は、輸出余力が大きい順に、EU(2970万t)>アメリカ(2500万t)>カナダ(2330万t)>ロシア(1850万t)>オーストラリア(1830万t)>ウクライナ(1150万t)>アルゼンチン(650万t)>カザフスタン(600万t)となります。そしてこれら8ヶ国の合計は1億4000万tとなり、これで世界全体の輸出量の90%以上を占めます。ウクライナは現在内戦状態で大変ではありますが、大穀倉地帯を擁し、小麦の輸出に関してはかなりの存在感を示しています。

【2】遺伝子組換え小麦(GMW= Genetically Modified Wheat)
小麦はコメと並び、最重要食糧であるため、GMWの開発については、従来かなり慎重に取り組んでいることろがありました。しかしここにきて世界中でその動きが活発になっているようです。GMWの品種研究開発の目的は、品質・成分改良、耐病性、ストレス要因への耐性、害虫耐性、除草剤耐性などが挙げられます。これらは簡単にいうと、①品質そのものを良くする②病気に強い品種③寒さ、熱、干ばつといったストレスに強い品種④害虫に強い品種、⑤除草剤に対して枯れない強い品種などで、早い話、簡単に品質の良い小麦を沢山つくりたいということです。しかし未だ遺伝子組換えについては強いアレルギーをお持ちの方も沢山いるので、今後どのような展開になるのか、とても気になるところです。

【3】二次加工業界の動向
アメリカにおける二次加工業界の動向について、気になる点だけをピックアップしてみました:
1.アメリカではグルテンフリー食品が一時人気となったが、この食品が有益であるというデータは検証できず、グルテンフリー食品ブームはやがて終息するだろうと予想。
2.小麦ふすま(食物繊維)には、便秘、体重増加、心臓血管病、タイプ2糖尿病などに対して予防作用があることをAACC International(アメリカ穀物化学者協会)が認め、現在この事実を取りまとめています。またハーバード大学公衆衛生学部などの研究によれば、全粒穀物を毎日1食摂取し続ければ、死亡リスクが5%低下し、心臓病での死亡リスクは9%低下するとの報告があります。
3.現在小麦全粒粉の流通量は、小麦粉全体の5%にしか過ぎないが、将来重要な役割を果たす可能性を秘めている。

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