#895 世界の小麦事情2024

アメリカ合衆国小麦連合会(U.S. WHEAT ASSOCIATES)は、アメリカの小麦生産者及び農務省から拠出された資金を基に、米国産小麦の輸出振興を目的とした組織です。先日、同連合会駐日代表の中野氏による「米国産小麦をとりまく現状」と題するお話を拝聴する機会がありましたので、例によって気になる点を備忘録としてまとめてみました。中野代表には申し訳ありまぜんが、今回は米国産小麦というよりも世界の小麦事情を中心にまとめてみました。

世界の穀物事情を一言で説明すると・・・。世界には現在、80億人が暮らし、年間大豆が4億トン、小麦が8億トン、トウモロコシが12億トン収穫されます。つまり小麦は100kg/人となり小麦粉歩留りを70%とすると小麦粉70kg/人。これはうどん約700杯、つまり毎日平均うどん2杯となります。現在、日本人の小麦粉消費量は、31.6kg/人(#864)と世界平均の半分以下なので、まだまだ伸びしろがあると思いがちですが、主食のコメ(51.5kg/人)が立ちはだかっているので、簡単なことではありません。それよりもコメ消費は右肩下がりであるのに対し、小麦は踏ん張っているので、むしろ大健闘といえます。

【①国際価格の推移】
さて直近20年の小麦価格の推移をみると、2008年には世界的な干ばつにより史上最高値をつけました。その後安定的に推移していましたが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機に再び高騰し、2022年3月8日には瞬間的ではありますが、14年ぶりに再度史上最高値13$63.5¢まで上昇。その後は下落しロシア侵攻前の水準まで戻ったものの、主要輸出国の在庫水準の低下を背景に小麦価格は底堅い動きを継続中です。

【②生産量の推移】
小麦の生産量は、世界的な増産を背景に常に7億トンを堅持し、もうすぐ8億トンに迫ろうかという勢いです。また貿易量も2億トン前後と、全生産量の30%を占めています。

【③世界の在庫率の推移】
在庫率は一見、安定しているように見えますが、中国を除くと20%程度に低下します。在庫量が減少すると、供給力不安が台頭し、市況の変動性が高まります。つまり在庫率が減少すると、価格高騰の可能性が高まります。

【④主要小麦輸入国】
何と言っても特筆すべきは中国です。中国は年間1.4億トンを生産する世界一の生産国ですが、一方消費も1.5億トンと世界一です。結局、中国は世界一の生産国でありながら年間1,000万トン以上を輸入する世界一の小麦輸入国でもあるのです。また米国産小麦の輸入に限るとメキシコ>フィリピン>日本の順番になります。フィリピンは日本より人口の少ない国ですが、年齢別人口構成が日本と全く異なる若い国なので、今後も輸入増加が予想されます。

【⑤米国産小麦】
直近では49,300万トンが生産されています。日本は、米国、カナダ、豪州の3カ国から小麦を輸入していますが、米国産輸入が一番多くなっています。特にカステラ、ケーキ、天ぷらのころもに使用される薄力粉は、米国産WW(Western White)が最高品質とされています。

【⑥カナダ産小麦】
直近では3,200万トンが生産されています。輸出先は、インドネシア>中国>日本>米国>ペルー>の順番で、日本は第3位です。カナダからは1CW(No.1 Canada Western)という優秀なパン用小麦が輸入されています。

【⑦豪州産小麦】
直近では2,550万トンが生産されています。豪州からの輸入で一番多い銘柄は、何と言ってもASW (Australian Standard White)です。改めて説明するまでもなく、ASWは現在日本でうどんなどの和風麺用途での利用が一番多い銘柄です。国産小麦にも優秀な銘柄は数多くありますが、作業適性(うどんの作りやすさ及び安定度)、製品の外観(うどんの色調)、食味食感などを総合的に勘案するとASWとなるようです。