#742 うどん県の年越し食事情

さて今年も残すところ僅かとなりました。うどん県では現在、レタス、ブロッコリー、金時人時などの出荷が最盛期を迎えています。ただニュースによれば、外食産業不振の影響を受け、価格は低迷しているようです。うどん屋さんも大変ですが、生産農家も同様です。一刻も早い収束を願うばかりです。さてイラスト担当者による新着情報をお届けいたします。
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気がつけば今年も残すところ2週間余りとなりました。コロナに翻弄された一年でしたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?さて香川県民にとって年末年始といえば、年越しうどんと年明けうどん。大晦日は、全国的には、「年越しそば」ですが、うどん県では、やっぱり「年越しうどん」でしょうか。また「年明けうどん」は、歴史は浅いものの、オープンソースであることが功を奏し、急速に普及した感があります。とにかく人参、梅干し、蒲鉾、何でも赤いトッピングをのせると年明けうどんとなります。まだの方は、ぜひ来年はお試しください。

さて、我が家に限っては、大晦日から正月三が日にかけての夕食は、決まって「讃岐そば」となります。ひたすら夕食は、お蕎麦を食べ続けます。ただ「そば」といっても、更科そばのようなシャキッとした蕎麦ではなく、香川特有の太い田舎そばです。これは小麦粉と蕎麦粉の割合が2:1(これが讃岐そばの黄金比です)という「蕎麦うどん」のような麺なので、かけそばにしてかきこみながら食べます。噛んだときに麺の弾力(跳ね返り)を感じますが、これは間違いなく小麦グルテンの効果です。至ってシンプルですが、「それだから飽きない」と父親は言います。

一方、元旦からの三が日にかけての朝食はといえば、讃岐特有の「あん餅雑煮」になります。最近は、変わったお雑煮としてテレビでも取り上げられるので、ご存知の方もいるかも知れませんが、これは白味噌仕立てのおつゆの中に、金時人参、大根、そしてあん餅が入っている讃岐特有のお雑煮です。「白味噌」と甘い「小豆あん」との組合せは、初めての人にとっては、なんとも想像できない衝撃的な味のようですが、慣れてしまえば、素直に美味しいと感じます。特にあんこが餅からはみ出て、白味噌と混ざりあうと、得も言われぬ美味しさとなります。

ただこのあん餅雑煮は、うどん県の全家庭に普及しているわけではありません。また東西で地域が分かれているわけでもなく、あん餅雑煮の分布は、香川県全体ではまだら模様となっていて、なぜそうなっているのかは謎です。個人的な意見ですが、一度あん餅雑煮を知ってしまうと、餡この入ってない餅入雑煮とか、おすましの雑煮は、なんか物足りなく感じてしまいます。

ところで、このあん餅雑煮に欠かせない「金時人参」は、京にんじんともよばれ、坂出市の特産農作物となっています。独特の「赤色」が特徴で、これがお雑煮やおせち料理に華を添えます。一般の農作物は作柄によって価格が上下しますが、この金時人時は、坂出市特産の農作物なので、従来価格変動が少なく、農家の安定した収入源の一つになっていました。ところが今年は、コロナ禍のせいで外食需要が低迷し、その影響が金時人参の価格にも影響していると聞きました。そういえば、今年は野菜全般についても価格が安定し、消費者にとっては、ありがたいのですが、生産農家の事情を考えると複雑な気持ちになります。

話は、うどんに戻りますが、東京にいるとよく周囲の人たちから「うどん作れるの?」なんて聞かれます。何を隠そう、小学校の家庭科では、なんと「あん餅雑煮」と「讃岐うどん」の実習時間がありました。しかしこれ以後は、うどんを打ったことは、ありません。また高校の学食では、うどんを注文すると、「てぼ(うどんを湯切りするカゴ)」を使って、自分でうどんを温めるシステムになっていて、これもうどん県ならではの、光景かと思います。それでは、みなさんどうか良い年をお迎えください。