#644 製粉工場見学@小川製粉

先日、東北は山形県の㈱小川製粉さんを見学する機会に恵まれました。さて山形県といえば、何を連想しますか?さくらんぼ、りんご、ラ・フランス、将棋の駒、芋煮などいくらでもでてきます。将棋の駒で有名な天童は、駅を降りると天童温泉通りがあり、その歩道を歩くと詰将棋が次から次と現れます。すぐ近くには人間将棋で有名な舞鶴山があります。また山形の風物詩である芋煮会フェスティバルも例年催されています。直径6.5メートルの鍋太郎に、クレーンを使って具材を投入する光景は、どなたも記憶にあるはずです。2018年9月16日の芋煮フェスティバルでは、12,695人に配食し、ギネス認定も受けました。

更には、意外かもしれませんが、山形は知る人ぞ知るラーメン王国でもあります。平成29年3月の「家計調査」によると、「年間1世帯当たりの中華そばの支出金額」では、山形市は15,622円で第1位。全国平均が5,929円なので、ほぼ3倍となります。タウンページ(2017年調査)によると、人口10万人当たりのラーメン店舗数も67.41軒と日本一。つまりラーメンではダントツの日本一となります。こう考えると山形のラーメンは、さぬきうどんにも、勝るとも劣らずといった感じです。しかもラーメン同様、蕎麦も名物で、最近ではラーメンと蕎麦のクロスオーバーである「鳥中華」も人気商品になりました。これは蕎麦に使用する和風だしと鶏肉を使用したあっさり風味のラーメンです。

さて前置きが長くなりましたが、このように山形県は日本有数の「粉もん県」であり、小川製粉さんは地元のラーメン店、蕎麦屋さんを後方支援している山形県唯一の製粉会社です。昔は国産小麦が主流であったため、製粉会社は全国に点在していましたが、現在は小麦の90%を輸入するようになり、製粉工場の立地条件もかなり異なってきました。つまり輸入小麦が陸揚げされる港に近い製粉工場が、経費を削減できるというわけです。そういう事情もあり、現在東北6県の製粉会社は4社となりまたが、皆さん地元密着型で地域経済に貢献されています。

ただ製粉産業は装置産業であるため、中小製粉は大手製粉のようにスケールメリットを十分に活かせていません。そこで各社知恵を絞りながら、製粉を軸にミックス粉や二次加工製品などの関連分野を手がけています。そして小川製粉さんでは、小麦粉を原料にグルテンやでんぷんを製造しています。グルテンは小麦粉特有の粘弾性を持つたんぱく質です。グルテンには様々な製法がありますが、小川製粉さんでは、フリーズドライ製法を採用。これは手間暇がかかりますが、添加物や薬品不使用のため薬品臭がなく、またグルテンの変性が少なく、活性度が高いのが特長です。グルテンは製パンや製麺の際に、2~4%混ぜると、ふっくらモチモチのパンや、コシの強いのびにくい麺ができあがります。また蕎麦のつなぎ粉に添加すると、繋がりやすくなります。興味ある方は、ぜひ一度お試しください。

さて最後に山形名物の板そばをご紹介しておきます。これは小型の「もろぶた」みたいな器にかなりの量の蕎麦が載っています。そばは無骨で太く、バキバキに硬いのですが、ぼりぼりほお張ると結構病みつきになります。板そばは集会等の皆が集まった際に振舞ったのが由来とされています。一緒に食した人たちのご縁が、ざるからこぼれ落ちるのではなく、板につくようにと、ざるそばではなく、板そばになっているとは、なかなか上手いアイデアです。天童温泉通りに一際目立つ「湯のまち天童 あなたの旅に、王手」の大型看板、「板そば同様、うまいこと言いようるな」と感じ入りました。