#643 糖質制限食の長期摂取が老化に与える影響

糖質制限ダイエットという言葉はすっかり定着した感がありますが、その内容についてはまだまだ誤解があるようです。これまで#436(アンチ「糖質制限ダイエット」本2冊)、#564(森谷敏夫式「炭水化物摂取ダイエット」)でもご紹介しましたが、私達の食生活において炭水化物(糖質)はなくてはならない三大栄養素の一つです。但し摂取過多は肥満の一因になるので、その意味において糖質制限は正しいとも言えます。しかし糖質に限らず、何でも食べ過ぎは良くないのは当たり前で、今更言うまでもありません。

さて「糖質制限食の長期摂取が老化に与える影響(都築毅著、製粉振興2018年9月)なる興味深い記事が業界紙に掲載されていたのでご紹介します。結論を先に言うと、マウスを使った実験では、糖質制限すると①老化の進行②生存率の低下③皮膚の老化の促進などの進行が確認されました。つまり糖質をとらないと早く老け、早く死ぬというわけです。以下、都築先生の実験と結果を簡単にまとめてみました。

【実験方法】
3週齢のマウスを1週間予備飼育後、1群20匹☓3群用意し、次の3種の食事を50週まで自由摂食させた。
CO群・・・通常の食事
HF群・・・高脂肪食
CR群・・・糖質制限食

【結果】
①試験期間中、CO群の2匹、HF群の2匹、CR群の7匹が死亡。CR群の生存率は、47週齢から急激に低下した。つまり糖質制限食は、マウスの生存率を低下させる。

②CR群はCO群やHR群に比べ皮膚や毛髪の状態が非常に悪く、見た目の老化が著しく促進(画像)。つまり糖質制限食は、マウスの見た目の老化を促進させる。

【まとめ】
この記事中では、他論文の興味深い結果についても紹介されています。例えば、現代日本食が現代米国食と比較して健康有益性に優れた食事であることがラットの実験で明らかになりました。ただ日本食もその内容が変化します。そこで1960年、1975年、1990年、2005年の平均的な日本食を、冷凍乾燥そして粉末化した試験食を、マウスに与えて比較。その結果、1975年日本食を摂取した群が、最も内臓脂肪が減少し、寿命を延伸し、老化性疾患の発症を遅延しました。その後この1975年型日本食は人においても有益な効果を持つことが判明。その1975年型日本食には次のような特徴があります。
①多様性、つまり多くの種類の食材を使用。
②「煮る」という調理法の使用頻度が多い。
③大豆製品、野菜、果物、緑茶、海藻、きのこ類の使用頻度が多い。
④出汁や発酵調味料(醤油、味噌、酢、みりん、酒)の使用頻度が多い。
⑤主食と汁物のセットの使用頻度が多い。
つまり1975年型食は、主食を中心に、汁物を添えて、色々な食材を少しずつ使用したおかずが特徴。そして糖質制限食は、日本食の炭水化物中心の食事と対極に位置する食事方法。

最近の大規模疫学研究によると、炭水化物の摂取量が高いと死亡率が増加し、心血管疾患の発症リスクが高まることが報告されました。つまり炭水化物は中程度の摂取がベストということになります。

【個人的な感想】
糖質制限食を摂取したマウスは、20匹中7匹も死んでしまいました。また皮膚が薄くなり毛髪がカサカサになるとは、ちょっとびっくりです。結局、過度な糖質制限は、老化を促進し、生存率も低下させることになります。また#564でも、糖質オフダイエットは危険であると報告されています。つまり適切な食事は、三大栄養素をバランスよく摂取することです。しかし食べ過ぎは禁物です。森谷先生も「肥満は1日僅か20kcalの食べ過ぎが原因」と指摘しています。つまり①偏食せずに1975年型食を実践する。②食べ過ぎない。③適度の運動を実践する、以上3点が健康生活実践のポイントということになります。毎日うどんを1玉食べて、つるつるのお肌になりましょう。