#400 中小製粉の行方

f400現在弊社WEBサイトでは、月4回の「新着情報」と「毎月のお知らせ」の合計5つのコンテンツを毎月アップしています。第1回目は2004年1月23日なので、概ね10年を経過したことになります。これまで弊社サイトにお立ち寄りいただきました方々には、謹んでお礼申し上げます。毎回何をアップしようか迷いますが、できるだけ小麦関連のトピックで、一般の方々にとって参考に、また興味をお持ちいただけるような内容をと心がけています。ただ、単なる備忘録みたいになってしまうこともありますが、どうかご了承ください。今回は400回の節目でもありますので、現在の日本の製粉産業について、中小製粉から眺めたところを説明してみたいと思います。

昭和40年には全国434社あった製粉会社は、現在では実質的に60社程度と、かなり減少しました(#110)。この主たる理由は、製粉産業が装置産業であることによります。昔は石臼と篩いだけでできていた小麦粉が、現在はロール製粉機を中心とした大規模設備により、大量にしかも安価に製造することができるようになりました。しかし同時に設備の初期投資が高額となり、その結果淘汰が進みました。弊社は現代の製粉工場としては、かなり小規模ですが、それでも1時間当り5t程度の小麦粉を製粉し、これはうどんやパンに換算すると3万食分の小麦粉になります。

この数字だけ見ると大きく感じるかもしれませんが、製粉工場としては小規模で、大手製粉会社の工場は、どこも5~10倍の規模となっています。大規模化する理由はただ一つ。それは効率化が進み、それだけ製造コストが低くなるということです。ときに「すいませんが、畑で穫れた小麦が20kg程あるのですが、製粉してもらえませんか?」という問い合わせをいただくことがあります。しかし現在では小規模製粉工場でさえも、20kgではなくて20tの小麦がないと純粋な小麦粉は製粉できないので、丁重にお断りしています。最初はどうも納得されないようですが、順序立てて説明をするとわかっていただけます(#185)。

世界的にみても製粉工場は大規模化の傾向にあるので、この流れは今後も続きそうです。もちろん小規模製粉にも長所はあります。大規模になればなるほど、少品種大量生産になりますが、小規模生産では、多品種小ロットが可能になり、それだけユーザの細かい要望に応えることが可能になります。また説明は割愛いたしますが、小規模であれば、それだけ鮮度の良い小麦粉をユーザの皆様にご提供できると考えています。ただ問題は、このプラスαの付加価値と、コストアップを合わせた全体の価値が、市場でどう判断されるかということです。

中小製粉に残された選択には他にもあります。それは弊社が現在行っている方法でもありますが、自社で製粉した小麦粉を原料として、うどんなどの二次加工製品の製造販売、つまり商品に付加価値をつけて販売する方法です。また物流の進歩に伴い、小麦粉ユーザに対する直接販売も方法も可能になりました。直接販売は、手間暇はかかりますが、皆様のお考えやお気持ちがストレートに伝わってきますので、大変良い勉強になると同時に、モチベーションアップにも繋がります。

「うまくうどんを作ることができた」、「ふわふわのパンが焼けた」、「美味しかった」、「友人に送って喜んでもらえた」といったお声は大きな励みになります。また日常生活の臨場感溢れるお便りをいただき、びっくりすることもあります。しかし逆に「到着が遅い」とか「対応が良くない」と言われると、まだまだ改善の余地があると反省する次第です。私たちは、この中小製粉というビジネスモデルが、存続できるかどうかを、現在全社を挙げて検証しているところです。今後共よろしくお願いしたします。