#401 2014年の年明けうどん新メニューは「あん餅うどん」

f401「年明けうどん」とは、うどんの更なる振興を図る目的で、さぬきうどん振興協議会が、2008年8月6日に商標登録申請し、2009年のお正月より実施されています(#217#298)。具体的には、白いうどんに、梅干し、ニンジン、蒲鉾など赤いものを添えて、新年のめでたさを演出する催しですが、容易に想像できるように、元々は「年越し蕎麦」に対抗して考案された企画です。当初さぬきのうどん屋さんの間では、「大晦日までうどんを打ってヘトヘトやし、正月くらいはのんびりしたいわ」という声も聞かれ、その普及については一部疑問視されていました。しかし誰にでも、制限なく、自由に使いたいだけ使えるというオープンソースが支持され、5年が経過した現在、予想以上に(?)普及したようです。

そして来年は年明けうどん6年目の正月を迎えるにあたり、先日、新メニューとして、衝撃の「赤い餡餅うどん」が提案されました。これは、さぬき特有の「あん餅雑煮」をヒントに創作されたメニューですが、「あん餅雑煮」をご存知ない方もいるかと思いますので、少し補足致します。とはいうものの、下手な説明よりも、山田竹系(ちっけい)先生(讃岐の百人で97位にランクイン)の「さぬきの雑煮」という短文が、「高松今昔ごぼれ話(昭和60年、高松市役所刊)」の中にありましたので、そこから一部をご紹介いたします(その方がずっと正しくお伝えできます。興味ある方は下記画像をご覧ください)。

さぬきの雑煮と言えば、まず誰でも珍しいものの筆頭に挙げる。丸モチのしかもアンコの入った雑煮で、他府県から来た人はこのアン入り雑煮にはびっくりする。
しかし、このアン入り雑煮は、さぬきのどこの家、どこの地方ででもやっているという訳ではない。ふつうは、白味噌仕立ての丸モチ雑煮で、ところによっては関東風の焼いた切りモチに野菜を入れたすまし汁雑煮もある。
(中略)
ところでアン入り雑煮の起源というか由来は、今のところさっぱりわかっていないが、さぬきは砂糖の生産王国であったから、砂糖アンのモチばかりこしらえたからだと言う人がいる、これはどうも当たらない話である。
もう一つの説は、奥さんか女中さんが誤って砂糖アン入りモチを雑煮に入れ、食べてみると案外うまかったので、それからはアン入り雑煮をつくるようになったと言うものである。
ところでこのアン入り雑煮は、もともとはやはり塩アンであったという説がもっぱらで、しかもそれは小豆ではなくソラ豆が最初は使われたのだろうと言う人が多い。わたしもそうだろうと思う。

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以上が、「赤いあん餅うどん」のベースになった「あん餅雑煮」のご紹介です。竹系先生も仰っているように、アン入り雑煮は香川県全域でやってるわけではありません。かといって東西に二分されている訳でもなく、その分布はまだら模様です。私はアン入り雑煮で大きくなったので、大好きです。逆に上京して初めて知人宅でいただいたお雑煮は、お澄ましの中に鶏肉が入っていてびっくりしたのを憶えています。アン入り雑煮は、特にアンコが流れでて、白みそと混ざり合った、そのビミョーな味わいが何とも言えませんが、未体験の方には、その美味しさは中々わかってもらえないようです。

さて本題に戻りますが、このあん餅うどんに対する感想を周りに聞いたところ、「うどんつゆだと、あん餅との相性がどうかなぁ?」とか「うどんアイスやうどんバーガーだってあるんだから、結構いけるんじゃないですか」等など好き勝手なご意見を頂戴いたしました。個人的には、さぬき伝統のあん餅雑煮に着目したセンスは、なかなかのものだと思います。「プリンの味は食べてみなければわからない」と言いますが、この「あん餅うどん」も是非みなさんご自身で確かめて頂きたいと思います。待ち遠しい年明けうどんですが、ただ一つ気がかりな点は、「あん餅」のカロリーでしょうか。みなさんもしっかりと運動をしてカロリーを消費し、「あん餅うどん」をご堪能ください。

下記記事は、2014年11月2日(土)の朝日新聞(香川版)及び四国新聞からの抜粋です:

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