#276 でん粉の性質その⑤

一口にでん粉といっても色々な植物のでん粉がありますので、ここでは主要なでん粉の種類をまとめておきたいと思います(参考文献「でん粉製品の知識」)。尚、でん粉の表記としては「澱粉」、「でん粉」、「てんぷん」、「デンプン」、「スターチ」などの呼び方がありますが、ここでは独断で「でん粉」に統一します。蛇足ながら、でん粉の名前の由来は、今から150年ほど昔、オランダ語から訳すときに「沈澱しやすい粉」という意味で、「澱粉」と命名されたそうです。

 

種類 でん粉名 補足
①穀類でん粉
コーンスターチ とうもろこしが原料
小麦でん粉
米でん粉
モロコシでん粉 モロコシは別名ソルガム(sorghum)もしくはきびと言います。
②豆類でん粉
エンドウやソラマメなどの豆類から採れるでん粉です。「はるさめ」は緑豆という植物からとれたでん粉が原料です。
③イモ類でん粉
馬鈴薯でん粉 ジャガイモのことです。
甘藷でん粉 サツマイモのことです。
タピオカでん粉 キャッサバという植物からとれたでん粉です。
希少でん粉 「れんこん」、「クワイ」といった植物からもでん粉がとれます。
④野草でん粉
クズでん粉 吉野くず、筑前くずといった和菓子に利用されます。
カタクリでん粉 カタクリの根茎から作られるでん粉です。
⑤幹茎でん粉
サゴヤシでん粉 でん粉は植物の子実や根茎に蓄積されるのが一般的ですが、幹に蓄積するのはヤシだけです。ヤシでん粉で最も有名なのは、「サゴヤシでん粉」です。

 

このように色々なでん粉がありますが、当然その性質も違ってきます。味も違えば食感も違います。しかし全てのでん粉に共通の性質として糊化現象があります。つまり加水して加熱することによって、全てのでんぷん粒は、「吸水⇒膨潤⇒崩壊⇒分散」の過程を辿ります(#271)。そして主要なでんぷんの粘度曲線が次の画像です。どのでん粉も熱することによって、膨潤を開始しますが、その開始温度や最高粘度は、個々のでん粉によって異なります。

一番の特徴は、タピオカや馬鈴薯といったイモ類でん粉は、糊化開始温度が低いことです(つまり早く糊化を開始します)。一般にでん粉は55℃以上になると膨潤を開始しますが、イモ類でん粉の粘度は急激に上がるのに対し、小麦でん粉のそれは非常にゆるやかな曲線を描きます。そして早く膨潤して崩壊するということは、それだけ早く糊化することなので、調理時間が短いことも意味します。簡単にまとめると次のようになります:

①タピオカや馬鈴薯といったイモ類でんぷんは、糊化開始温度が低いのに対し、小麦でんぷんは非常にゆるやかな曲線を描く。

②糊化開始温度が低いということは、それだけ調理時間が短いことを意味します。