#976 HB使用のうどん①

毎日使用していたHB(ホームベーカリー)がとうとう天寿を全うしましたので、新機種を購入しました。従来同様、美味しい食パンが焼けるのですが、ひとつびっくりしたことがあります。それはメニューがなんと40種類もあるのです。パン・ドミ、もちもちパン、食パン、ソフト食パン、早焼き食パン、・・・と続きます。全てを試すわけにはいきませんが、その中で特に気になったメニューが、「うどん・パスタ」です。これはパンケースを利用して小麦粉と塩水から「うどん生地」を作るメニューです。

手打ちうどんの製法を簡単に復習しておくと、その工程は大きく「①水合わせ(混合)②足踏み(混練)③寝かし(熟成)④延ばし⑤切る⑥ゆでる」に分かれます(#784)。この工程中、私たちが最重要と考えるのは①水合わせ工程です。これは小麦粉と塩水を均一に混ぜ合わせる工程のことで、一見、簡単なようですが、実際はそうではありません(#336)。理由は、小麦粉と水はあまり相性が良くないので、意識しないと上手に混ざりあわないからです(#292)。もし一度に塩水を放り込んでしまうと、生地中の水分にムラができてしまい良くありません。

水合わせの出来不出来によらず、一旦、団子(うどん生地)になってしまうと、外見は同じに見えるので、それが、水合わせが軽視される一因かもしれません。生地中の水分にムラがあると、水分の少ない部分はいくら捏ねてもグルテンが発生しないので、うどんが切れやすくなったり、熟成しても風味がでないので粉っぽくなったりします。一方、過度に水分が偏った部分は、うどんのコシが弱くなったり水っぽくなったりします。よって水合わせ工程は、目には見えない部分ですが、とても重要です。不十分な水合わせは、最後まで尾を引きます。

前置きが長くなりましたが、HBによるうどん生地作成手順を簡単に説明します。HBの本来の目的はパンを焼くことですが、このパンケースを利用してうどん生地を作ることもできます。パンケース内は、中心に羽根が固定され、これが回転することで、うどん生地を捏ね上げます。パン生地とうどん生地では加水量が異なるので、両者では使用する羽根の形状も異なり、うどん生地用の羽根は、画像下のように少し短くまた垂直方向に傾斜しています。

HB使用時のうどん生地の取説レシピには(以下HBレシピ)、(中力粉:460g、塩:15g、ぬるま湯:250g)と記載されているので、これから加水率58%、塩水濃度は5.7%となります。通常の手打ちうどんのレシピ(以下手打ちレシピ)では、塩水濃度は10%(冬季)~13%(夏季)、加水率は45~50%が標準なので、HBレシピは手打ちレシピに比べ、加水量が多く、また塩水濃度は低いことがわかります。つまりHBレシピでの生地は、かなり軟らかくなることが予想されます。

実際、HBレシピで練り上げた生地は、ぬるま湯を使用したせいもあり、軟らかくなりすぎて、この状態ではとても延ばすことができません。そこで冷蔵庫で冷却して硬くしましたが、それでも麺棒で延ばすときはほとんど力を加えることなく簡単に延びました。塩水濃度も通常より低いため、生地の反発力も乏しく(食塩は生地を引き締める効果があります)、かなり平麺に仕上がりました。ゆであがった麺は、「低い塩水濃度+高い加水率」のために「食感の軟かい平麺」となりました。

HBレシピうどんは、しっかりと小麦の風味も感じられ、通常の手打ちうどんとは食感がかなり異なりますが、これはこれで美味しいうどんです。ただ足踏み工程がないので、うどん特有のコシ(しっかり感)はありません。一言でまとめるとHBレシピうどんとは、「ソフトでさらさらお茶漬食感」となり、鳴門うどんに近いうどんだと感じました。