#904 乾めんの生産量18万トンを割り込む@2023

【R5めん類生産量】
令和5年(2023)の各種めん類生産量が発表されました(画像参照)。前年(R4)と比較し、総生産量は100.04%とほぼ同じですが、生麺(102.97%)とマカロニ類(101.61%)が微増に対し乾めん(98.4%)、即席麺(94.47%)は減少となりました。特に乾めんは史上初めて18万トンを割り込み、時代の趨勢を感じざるを得ません。昭和の最盛期には36.4万トンの生産量を記録したので、半減以下となりました。ただこれは乾めんの魅力がなくなったのではなく、食の多様化の結果であると考えるのが妥当です。

①製造、②包装、③流通・保管のそれぞれの段階における技術革新の結果、めんの世界はすっかり様変わりしました(#865)。香川県ではかつてうどんといえば、製麺所のうどん玉、もしくは乾めんの二択のみでした。しかし湿気や酸素をシャットアウトするガスバリア袋が開発されたお陰で、ゆでたうどんを加熱殺菌し、完全密閉することで、数ヶ月の常温保存できる「LL(Long Life)めん」が開発されました。また通常流通であればカビが発生するような「ゆでる前の状態のうどん」でも、ガスバリア袋にいれることで、常温流通が可能になり、家庭でも専門店のうどんが調理できるようになりました。さらには「冷凍うどん」、即席めん・カップ麺など様々なタイプのうどんが次々と開発されました。

つまり多様な選択肢が増えた結果、それぞれの需要が分散されるのは当然の結果です。加えて、簡便性・利便性が重宝される現在においては、乾めんはますます肩身が狭く、需要減少は仕方ありません。ただ乾めんには乾めん独特の魅力があります。特に夏の涼感たっぷりのそうめんや乾めんの釜揚げうどん食感は、他のめん類ではなかなか再現できません。よって乾めんの生産量もそろそろ下げ止まった感があるとの希望的観測もあります。

【乾めん減少の内訳】
かつての半減以下となった乾めんですが、種類別の推移をみると実情がよくわかります。過去30年間に乾麺全体では、30%程度下落していますが、特に落ち込みが大きいのがうどん(38.8%)です(画像下)。冷凍めん(種別は生めんに分類)、R5の生産量(画像右)をみると、全体の20.2億食のうち、うどんは11.4億食と半数以上を占めています。つまり冷凍めんといえば冷凍うどんと言っても過言ではありません。よって調理時間の長い乾麺のうどんが、冷凍うどんやLLめんに代替されたのは、明らかです。

【そうめんのこれから】
では乾めんの代表格であるそうめんは、今後どうなるでしょう。涼感たっぷりのそうめんの代替品は見つけるのが困難です。またゆで時間も短いので冷凍そうめんにする意味がなく、よってそうめんは今後も存続するはずです。そうめんは、「機械そうめん」と「手延そうめん」に大別されます。前者は、生地をローラーで薄く延ばした後、切刃でカットするので大量生産が可能であるのに対し、後者は、生地をどんどん引っ張りながら最終的にそうめんにするために、手作業が多くなりマンパワーが必要となります。当然、前者は廉価、後者は高価です。

両者はこの30年間でどうなったかといえば、手延そうめん:7.4万トン⇒5.6万トン(75.3%)、に対し機械そうめん:4.1万トン⇒2.6万トン(64.9%)となり、機械めんの下げ幅が大きいので、市場は手延そうめんをより評価しているようにも見えます。しかし今後は未定です。ある手延そうめん製造者に聞くと、1人1日小麦粉2袋(50kg)の製造が目標だそうです。仮に人件費を1.5万円/日とすると、これを標準的な手延そうめん300g1袋に換算すると90円となります。よって機械めんの人件費は、かなり安価であることを考慮すると、両者の価格差は、この90円に近くになると予想できます。ただ最近は人手不足が顕著になり、今後さらなる人件費上昇も予想され、両者の価格差は広がるかもしれません。機械めんの品質も向上しているので、どれだけの価格差までなら市場が評価してくれるのか、こればっかりはなってみないとわかりません。