#871 小豆島手延そうめん「島の夢」

小豆島手延そうめんの起源は、約400年前に伊勢参りに行った島民が、三輪そうめんの作り方を学び、持ち帰ったのが始まりとされています。その後、小豆島独自の改良を加え、現在は天日干し、および麺をのばす際に、ごま油を使用していることが小豆島手延そうめんの特長です。ごま油を使用することで、小豆島そうめん独特の風味を生みだし、麺はほんのりと淡い黄色を呈し、口に入れるとごま油の風味が口いっぱいに広がります。そして小豆島手延素麺(協)が製造販売する手延素麺のブランド名が「島の光」です。

ところで手延そうめんの主原料である小麦粉は、中力粉もしくは準強力粉が使用されます。具体的にいうとタンパク質含有量が8~10%程度の小麦粉です。小麦粉には多くのタンパク質が含まれますが、その中でも特に重要なタンパク質は、弾性をもつグルテニンと粘性をもつグリアジンで、これが小麦粉特有の粘弾性をもつグルテンになります。小麦粉に加水し捏ねるとバラバラになることなくひとつのまとまった生地になりますが、これはグルテンのもつ粘弾性(「つなぎ力」)のおかげです。米粉にはグルテンが含まれないので、いくら加水を調整しても、粘りのある生地にはなりません。

生地の「つなぎ力」であるグルテンはうどんにとっては、もちろん重要ですが、手延素麺にとっては更に重要です。以下、簡単にその理由を説明します。手延べそうめん1束(50g)には約300本の麺が含まれます。素麺1本の長さは19cmなので1kgの手延べそうめんを一列に並べると1,140mになります。手延素麺はひとつの生地をひっぱりながら延ばして仕上げるので、小麦粉1kgの生地は、なんと1km以上に延ばされることになります。つまり手延べそうめんは元の生地の1/10000の太さ(細さ)になるわけです。

そしてその生地を引っぱって細くできるのも、そのグルテンのもつ粘弾性のおかげです。うどんは麺が太いので、多少グルテンが少なくても丁寧に作業すれば立派なうどんができますが、手延べそうめんでは、グルテンがしっかりしていないと、途中で切れてしまい、うまく最終製品にまでなりません。手延べ素麺の職人さんは、独特の表現で「よく延びる粉をもって来てくれ」といいますが、これは練った生地を引っぱったときにスイスイ伸びることを意味し、これはしなやかな粘弾性に富んだグルテンがあってこそ可能です。

以上のような理由により、従来の和風麺用小麦粉(うどん、手延そうめん)には、グルテンの伸展性に優れたASWを主体とした小麦粉が使用されていました。香川県であれば、本来は香川県産小麦である「さぬきの夢」を使用したいところですが、グルテン含有量が十分ではないために作業適性があまり良くありませんでした。具体的に言えば、生地を延ばすときに、普通に引っ張ると「ぷつっ」と切れてしまい、また切れないようにするには時間がかかり過ぎてしまい、生産者の評判は、今ひとつでした。皆さん、早朝から作業をしているので、作業効率の低さは致命的です。

しかし硬質小麦である「はるみずき」の生産を開始することで、香川県産小麦100%による手延そうめんの生産が可能となりました。昨年、試験栽培した「はるみずき」を製粉し、これと「さぬきの夢」のブレンド比率を色々試すことで、香川県産100%小麦粉による高品質の手延素麺の製造が可能となりました。そしてこの香川県産100%使用の手延素麺は、「島の夢」と名付けられ、9月より限定販売される予定です。改めて説明するまでもありませんが、新商品名「島の光」は、小豆島手延素麺の素麺ブランド「島の光」と香川のオリジナル小麦ブランド「さぬきの夢」から命名されました。今後、「島の光」同様、「島の夢」をどうぞよろしくお願い申し上げます。