#869 令和5年産国産小麦の動向

先日(R5.7.25)、第25回香川県麦民間流通地方連絡協議会がありましたので、その備忘録を兼ねてのご報告です。まずは国産小麦(以下内麦)全般の傾向をまとめ、次に香川県の状況を説明いたします。

【国産小麦の需要と生産について】
R4年産の全国の内麦の作付面積は22.7万haに対し、収穫量は99.4万㌧。また近年の内麦生産量は70万㌧~100万㌧で推移しています。一方、国内の小麦需要は、近年550万㌧程度で推移しているので、内麦の占有率は、15%前後となり、残りを外国産小麦(以下外麦)で補っています。日本の基本的な小麦政策は、食料安全保障の考えに基づき、「できるだけ内麦を振興し、不足分を外麦で補う」ことになっていますので、今後は更に内麦比率を上げたいところです。

内麦比率を上げたいなら、どんどん作付面積を増やせばすむことですが、状況はそれほど簡単ではありません。次のグラフは、内麦の販売予定数量と購入希望数量の推移です。一定割合での購入希望数量はあるものの、生産量(販売予定数量)が増えると、「生産量>購入希望数量」となり、逆に生産量が減少すると、「生産量<購入希望数量」となるので、単純に作付面積を増やすことはできません。小麦に限らず「国産」と名がつけば「安全安心」が連想されてイメージは良いのですが、それが直ちに消費量アップには直結しないのです。以下その理由を説明します。

日本人の食生活は豊かになり飽食の時代と言われる現在、小麦粉に対する要求もどんどんアップしました。小麦粉には粘弾性を有するグルテンが含まれているので、どんな小麦粉からでもパン、うどん、カステラなどすべての小麦粉製品をつくることができます。とはいうものの、石のようなパンよりも弾力のあるパン、ふにゃふにゃのうどんよりもコシのあるうどん、もったりしたカステラよりもふんわりしたカステラが好まれます。そしてこれらの相違はすべて小麦粉の種類に起因します。

よって現在のところ内麦の品質はいい線はいっているものの、純粋に加工適性だけを考慮するとまだすべての外麦を代替するまでには至っていません。ただ最近は、内麦も民間流通制度という競争原理が導入された結果、魅力的な新品種が続々と開発されています。特に、パン用、中華麺用に適している硬質室小麦は、以前は限定的であったのが、最近では占有率が26%までに伸長しました。うどん県でも「はるみずき」の生産が始まり、今後が楽しみです。

【香川県における小麦事情】
香川県におけるR4年とR5年の各銘柄の生産数量、作付面積、単収は以下の通りです。
R4年 さぬきの夢8,700㌧(2,284ha)⇒単収381kg/10a
R5年 さぬきの夢8,700㌧(2,451ha)⇒単収355kg/10a
R5年 はるみずき 300㌧(300㌧) ⇒単収411kg/10a

R5は、前年に比べ作付面積が167ha増えたものの、GW時の降雨に加え、収穫時の降雨により一部コンバインが入れない畑もあり、結果としては昨年と同じ数量となりました。一方、大分県の奨励品種に指定されている「はるみずき」は、R5 より香川県でも部分的に生産が始まりました。香川県全体の耕作面積増加に伴い、「さぬきの夢」供給力にゆとり感がでてきたので、はるみずきの生産開始はちょうど良いタイミングです。

はるみずきは、タンパク含有量が高い硬質小麦であるので本来の用途は、パン用もしくは醤油用ですが、麺用小麦粉にブレンドすることで、うどんのコシの強化や作業適性の向上が見込まれるために、うどん県としても大きな期待を寄せているところです。これまでは「さぬきの夢」のみでしたが、今後はパン用から麺用まで様々なタイプの香川県産100%の小麦粉を提供できるようになります。どうかご期待ください。