#860 米・大麦・小麦需要の推移

主要穀物である米、小麦、大麦の需要の推移をe-Stat(政府統計ポータルサイト)からダウンロードしてグラフにしてみました。一見無味乾燥な数字のデータもグラフにすると、よくわかります。

①米
1960年における米の国内生産1,286万(輸入22万㌧)でしたが、2021年には国内生産856万㌧(輸入88万㌧)と、約2/3にまで減少しました。「平成米騒動」がおきた1993年には、生産が大きく落ち込みました。この年は梅雨前線が長期間日本に停滞し、九州地方ではついに梅雨明け宣言の発表がなされなかったという異常な年でした。よってお米の代替品として、麺類需要が一時的に伸びました。

米不足解消のため翌年にはタイなどの東南アジアからお米が緊急輸入されました。しかしタイ米はインディカ米(長粒米)、そして日本の米はジャポニカ米(短粒米)と種類が異なるため、タイ米は日本人の口にはあいませんでした。その後、輸入米(赤色の部分)が定期的に輸入されるようになりますが、これはガットウルグアイ・ラウンドにおいて、米の関税化と引換えにMA米(ミニマムアクセス米)の輸入を認めた結果です。ただでさえお米が余っているのにMA米を輸入することで、益々減反が加速されました。

2021年実績でいうと、飼料用66.5万㌧、酒類用15.1万㌧、みそ醤油用5.6万㌧、また白米1人当たり年間51.5kgでした。

②大麦
1960年の大麦の国内生産は230万㌧でしたが、その後国産大麦は、みるみるうちに減少。全体としての需要は200万㌧程度と、昔とほぼ同じですが、内容は大きく異なります。2021年実績でいうと、酒類用(焼酎)72.3万㌧、みそ・醤油用0.8万㌧、工業用7.6万㌧、飼料用102.3万㌧となります。食用は僅か4.3万㌧に過ぎず、一人当たりに換算すると年間300g程度しかありません。

③小麦
私たちが関心のある小麦についていうと、需要はこの50年間で400万tから600万tと約1.5倍になりました。2021年の実績の内訳をみると、飼料用88.3万㌧、みそ醤油用10.9万㌧、のり・その他16.6万㌧の合計が115.8万㌧。食用は508.5万㌧となり、小麦粉歩留まりを78%とすると、これは小麦粉1人当たり年間31.6kg、もしくは1日当たり86.6g、つまりうどん1玉分となります。

安全安心のイメージ定着の国産小麦は、1960年には153万㌧生産されましたが、現在は年間100万㌧程度で推移しています。「人気の割には生産量が少ないではないか?」と感じる方もいるかもしれませんが、作業適性つまり「うどんやパンなどの製品の作りやすさ」についてはまだまだ外国産の方が優れているからです。以前は国産小麦といえば、ほとんどが和風麺用でしたが、最近はパン用小麦(#845)も各地で次々と開発され、様々な銘柄が登場しています。これから更なる需要増大に期待したいところです。

④香川県産小麦
香川県産小麦は、かつては耕作面積18,000ha、生産量54,000㌧という時代もありましたが、その後は減少の一途をたどり、一時は絶滅寸前の900㌧(326ha)にまで落ち込みました。しかしうどん県民の「うどん県の小麦でつくったうどんが食べたい!」という声が高まり、2000年にさぬきうどん専用の小麦「さぬきの夢2000」が開発されました。その後、2009年には、2代目さぬきの夢である「さぬきの夢2009」が開発され、今年から徐々に3代目さぬきの夢に切り替わる予定です。結果、最近は毎年コンスタントに8,000㌧を生産しています。