#796 プレミックス製造業の概要

業界紙(製粉振興#616)に「プレミックス製造業の概要(安田洋一著)」をいう記事が掲載されていたので、簡単にまとめてみました。プレミックスとはプリペアードミックス(Prepared Mix)の略語で、ケーキ、パン、惣菜などを簡単に調理できる調整粉のことです。つまり小麦粉等の粉類をベースに糖類、油脂、粉乳、卵粉、膨張剤、食塩、香料などを加えたもので、一例をあげると、ホットケーキミックス、お好み焼き粉、天ぷら粉などがそうです。

プレミックスの歴史は、アメリカで1848年に誕生したセルフレイジングフラワー(self-rising flour=膨張剤入粉) に始まります。これは小麦粉にBP(ベーキングパウダー)などの膨張剤が入っているので、お菓子の製造が簡単にできます。19世紀になるとトウモロコシ粉、そば粉、膨張剤入のパンケーキミックスも登場します。また日本では、1931年(昭和6)に発売されたホットケーキミックスの素が、プレミックスの始まりだと言われています。

現在のプレミックス市場は、大きく家庭用と業務用に別れ、前者はスーパーなどで販売されるのに対し、後者はベーカリー、食品工場、レストラン、ホテルなどで使用されます。またプレミックスの種類としては、糖類の有無に着目すると、加糖プレミックス(ホットケーキミックス、ドーナツミックス等)と無糖プレミックス(天ぷら粉、お好み焼き粉、たこ焼き粉、から揚げ粉等)に大別されます。

もちろんお好み焼きやたこ焼きなどは、普通の小麦粉でも問題なく焼けますが、原材料を予め調合しているプレミックスをすることで手間暇を省き、簡単に美味しくふっくらと焼きあげることができます。スーパーの食品売り場をみても、小麦粉単体の種類は限られますが、プレミックスとなると色んな商品が並んでいます。同様に、醤油単体は種類が少なく、ドレッシングや出汁醤油は、どれにしようか迷うくらい沢山あります。これも利便性、簡便性を求めた結果です。

さて下図はプレミックスの国内生産量の推移です。直近の2020年生産量は、業務用28.2万tと家庭用7.9万tの合計36.1万tとなります。前年と比較して、業務用が大きく落込む反面、家庭用が伸びていますが、理由は言うまでもなく、新型コロナウイルスの影響で、外食産業が大きく落込み、巣ごもり需要が伸びた結果です。30年間の推移をみると、需要全体では22.9万t↑36.1万tと1.57倍になっています。ただ内訳をみると、家庭用はほとんど同じであるのに対し、業務用が大きく伸び、現在では全体の80%を占めています。

業務用プレミックスの伸びは、ベーカリー向けプレミックスの多品種化に加え、和風スナック商品(お好み焼き、たこ焼き、たい焼き等)に業務用プレミックスが使用されるようになった結果です。家庭だけでなく、業務用もどんどん効率化を勧めた結果、分業化が進み、プレミックスが使用されるようになったということです。それにしても、お好み焼きやたこ焼きならわざわざプレミックスを使用しなくても、自分で小麦粉に卵や鰹節を入れて自分好みに仕上げても良いような気もしますが、これも時代の流れでしょうか。