#766 苦手な生き物

6月も半ばを迎え、気温が上昇し、マスク装着も徐々に苦痛になってきました。みなさんは、いかがお過ごしでしょうか。ワクチン接収も加速し、今暫しの辛抱でしょうか。さてイラスト担当者による新着情報をお届けします。

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皆さんは生き物、好きですか?私は柴犬とゴールデンレトリーバーが大好きで、毎日SNSでフォローしている飼い主さんの投稿写真を見て癒されています。ただ全ての生き物が好きなわけではありません。苦手もあります。なかでも最もみんなが恐れるのがそう、ゴキブリです。私の実家は、綺麗好きの母のおかげか、田舎の割には家の中でゴキブリに遭遇する機会は、ほぼ皆無。稀に出現しても、父も母も特に恐れることなく対応します。それに比べると私はビビりな方で、ひるんでいると、決まって「おとっちゃまやなあ(香川の方言で「ビビり」の意味)」と言われます。

そんな私ですが忘れもしない一昨年の夏、初めて東京の家にゴキブリが出現しました。母をリスペクトして部屋はいつも綺麗にしていただけにショックを隠せませんが、一階ということを考慮すると「よくそれまで一度も出なかった」と周囲には感心されます。

ある日押し入れを開けると、そこに小さな虫を発見。色は明るい茶色で、一眼見た時に私はてっきりコオロギかと思い呑気に覗き込んだのですが、ビジュアルでそれがゴキブリだと瞬間的に事態を把握しました。人間とは凄いもので、周囲に頼る人がいないと、なんとかするもので、私もすぐに腹を括ってティッシュケースで叩き、そのままティシュに包んで捨てました。

しかし「ゴキブリは一匹出たら百匹は隠れている」と聞いたことがあるので、どこかモヤモヤしながらその日が暮れました。それから僅か二日後、あろうことかまたしてもゴキブリを発見。今後は洗面所の電気をパッと付けると、床の中央に堂々と居座っています。それは前回よりも大きく黒いゴキブリでした。その大きさから前回のようにティッシュケースで叩く勇気はなく、これは玄関まで誘導して自ら生きて外に出てもらおうという判断に、即座に切り替わりました。

近くにあった書類で背後から追いやると、案外言うことを聞く子で、あっさりと廊下まで出てくれました。しかし廊下の中盤に差し掛かったところで急停止し、見るとその右手には冷蔵庫があります。「この冷蔵庫の下に潜るのが格好だな・・・」というゴキブリの心の声が聞こえた気がしました。しかしここで変な刺激を与えては余計に冷蔵庫ルートを促し兼ねません。「頼むから素直に玄関に行ってくれ」の一心で念じると、方向を切り替えなんと玄関に歩みを進めてくれました。

有難いことにすんなりと扉の前に来てくれたので、私は快く扉を開けゴキブリを外に放つことができました。これぞまさにハッピーエンド。そしてこれ以降、今日まで家の中でゴキブリを見ることはありません。今になって考えてみると、その時期はアパート隣の建物が取り壊され、地面が掘り返されていたので、きっとそれで虫達が一気に表に出てきたんだろうな、と思うことにしました。

ところでなぜゴキブリが嫌いなのかは、生理的な事柄であるので、説明できませんが、先日「生物はなぜ死ぬのか(小林武彦著)」を読んで少し気が変わりました。実は現在、地球には、およそ800万種の動植物がいますが、そのうちなんと100万種が、人類の活動により、数十年以内に絶命の可能性があるそうです。

ある特定の種が絶滅しても、生態系の中では、似たような種がその代替をするので、問題はありません。しかし一度に大量の種が絶滅すると、生態系がそれを吸収できなくなります。つまり絶滅した生き物に依存していた生き物も絶滅し、ドミノ倒し的に多くの生き物が一気に消滅し、その結果人類にとっても甚大な影響がでるそうです。言い換えると、世の中は、生物の多様性によりバランスが保たれていて、ゴキブリももちろんその一員です。そう考えると、ゴキブリもかけがえのない仲間でもあるわけで、なんとも複雑な心境です。