#652 さぬきの夢最新情報@2019.01.21

先日(2016.01.21)、JA香川県において香川県民間流通麦意見交換会がありました。これは実需者(主に製粉会社)、行政、生産者(JA香川県)が集まり、香川県の小麦、つまり「さぬきの夢」に関して意見を交換する会です。以下備忘録として気になった点を簡単にまとめておきます。

【1.平成30年播き麦の播種・生育状況】
「さぬきの夢」は例年11~12月に播種を行い、翌年の6月に収穫します。つまりH30の秋に播いた小麦が、H31 産小麦となります。今年は10月中旬から11月下旬まで、降水量が平年より少ない状況が続いたので、ほ場の条件は良好で、播種作業は順調に進み、11月末までに播種計画面積(1,885ha)の90%の播種が完了。よって現在のところは順調に推移していますが、問題はこれからの天候です。特に収穫前の降雨がないことを祈るばかりです。

【2.「さぬきの夢」の作付面積】
作付面積は、H30産(1,826ha)、H31産(1,885ha)、H32産(1,870ha予定)と安定して1,800haを維持。数年前までは1,500ha程度(#393)でしたので、20%のアップとなります。他地域では小麦の作付面積アップが思うように進んでいないのに対し、香川県ではここまで増えたのは、関係者各位の努力の賜物です。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また作付面積のアップに伴い、生産量もここ数年は6,000tを安定的に維持できているので、需給バランスもほぼ釣り合いがとれてきたようです。

【3.内麦価格の高騰】
外麦(輸入小麦)価格は、現在買付け価格の変動により、年に2回の価格改定が行われています。一方、内麦は原則的には入札によって価格が決まりますが、少し前から外麦価格と連動するように変更されました。変更された理由は、国際価格が大幅に変動した場合に、内麦価格との整合性がとれないからです。よって基本は入札によって決定されますが、それに加えて外麦の製粉売渡価格の改定率が反映されます(これを「価格の事後調整」といいます)。つまり内麦価格は、①入札価格+②価格の事後調整によって決定されます。

面倒な話はさておき、ここの数年の内麦人気の影響を受けて、内麦価格は上昇を続け、昨年の内麦価格はとうとう外麦価格を上回るようになりました。製粉会社にとっては頭の痛い状況です。特に「さぬきの夢」は数年前から日本一高い小麦(つまり世界一)となりました。「さぬきの夢」はその価格にふさわしい高品質の小麦であることは間違いありませんが、これ以上高くなると消費者の理解を得られるかどうか心配なところです。

【4.「さぬきの夢」後継品種】

うどん県にうどん専用の小麦がないのはマズイというので、香川県農業試験場では、1991年(平成3年)から香川県独自の小麦の育種が始まりました。ここで開発された小麦は、順番に「香育○○号」という系統名が付けられます。また「さぬきの夢」は香川県で開発されたうどん用小麦粉の総称です。2000年に、うどん用小麦として初めて「さぬきの夢2000」(系統名は香育7号)が開発され、これが初代「さぬきの夢」です。その後も小麦品種の開発は続き、2009年に開発された「さぬきの夢2009」(系統名は香育21号)が「さぬきの夢2000」の後継品種となり、これが二代目「さぬきの夢」です(詳細は#343)。

現在は二代目が世にでてから10年が経過し、そろそろ次世代「さぬきの夢」が登場する時期に差し掛かっています。初代「さぬきの夢」は、食味は抜群でしたが、タンパク質不足が唯一の問題点でした。つまり生地の「つなぎ力」が十分ではないため、打ち手の技術が求められました。二代目「さぬきの夢」では、タンパク質不足の問題点がある程度か解消されました。しかし作業適性の点でいえば、まだASW(オーストラリア産小麦)の方に一日の長があります。よって食味、作業適性両方においてASWを凌ぐ三代目「さぬきの夢」の登場が待たれます。

11月に播種した「さぬきの夢」@2019.01.07