#589 H28年産国産小麦の概要

f589現在、日本における小麦需要は、およそ600万t。1等粉歩留り60%、人口1億2000万人として、単純に計算すると一人当り年間24kgとなり、これはうどん玉に換算すると300玉余り。つまり私たちは毎日うどん1玉程度の小麦粉を摂取していることになります。そして小麦600万tの内訳は、国産小麦100万トンに対しアメリカ・カナダ・オーストラリアからの輸入小麦が500万tです。業界紙である「製粉振興2017.9月号」に、平成28年産国産小麦の詳細なデータが掲載されていたので、備忘録を兼ねて簡単にまとめてみました。

日本全国を8ブロックに分割してあります。【関東・東山】地域の東山地方は、一般には長野県、山梨県、岐阜県を指しますが、農林水産省の農林業センサスでは長野県と山梨県の二県のみを指すようです。以下気づいた点を列挙します。

①北海道と九州が小麦の主要産地
北海道は、62万t(全体の70%以上)、九州は9万t(同10%以上)を生産し、両者を併せると国産小麦の80%以上を生産します。また反収(10a当りの生産量)をみると北海道は506kg/反と、他地域を圧倒し、中国地方のなんと2倍以上の収量をあげています。「きたほなみ」単独の収量は約48万tでこれは国産小麦全体の54.7%を占めます。

②小麦を生産しない地域
東京(2t)、神奈川(50t)、大阪(0t)、高知(4t)、鹿児島(13t)、沖縄(0t)の6都県は、小麦の生産はほぼないと考えて差し支えないでしょう。

③三県麦(さんけんばく)
昭和に入ってからは兵庫、岡山、香川の麦は「三県麦」と称され全国的にも高く評価されてきました。理由はこれらの地域は、温暖で雨が少ないといった気象条件や土壌が麦づくりに適していたからです。現在は、兵庫(3466t)、岡山(1750t)、香川(4534)と3県併せて約1万tの小麦を生産します。特に讃岐(香川)は昔から良質の小麦の生産地として知られ、江戸の中期(1713年)に出版された百科事典『和漢三才図絵』に「諸国みなこれあるも、讃州丸亀の産を上とする。」との記述があり、讃岐の麦は昔から優れた品質であったことがわかります。

香川県の小麦の生産量は明治以降順調に増え続け、1961年(昭和36年)には史上最高の5万3600トンを記録しました(現在のなんと10倍!)。ところが2年後の昭和38年に状況は一変します。収穫前の長雨で、県内の小麦は壊滅的な被害を受け、作況指数はなんと11まで落ち込みます。またこの時期は折しも高度成長時代と重なり、農業所得は相対的に減り続ける一方で、この年を境に農業離れが一気に加速します。しかし近年「うどん県の小麦を振興しよう!」という機運が高まり、2000年には香川県農業試験場により、さぬきうどん専用小麦の「さぬきの夢2000」が開発されました。現在は二代目の「さぬきの夢2009」となり、年間5,000t程度で推移しています。

④各地域の耕作銘柄
以下は各地域の耕作銘柄です。( )内は、それぞれの地域内での占有率です。国産小麦は、麺用の中間質小麦が主体ですが、中には「春よ恋」、「ゆめちから」、「ゆきちから」、「ミナミノカオリ」といったパン用の硬質小麦もあります。「◯◯ちから」という銘柄は、強力粉を連想させるので、硬質小麦のネーミングとしては覚えやすくて助かります。同様に、「春よ恋」、「はるきらり」、「ハルユタカ」のように「はる」がつくと、春蒔き硬質小麦となります。

【北海道】きたほなみ(78.1%)、ゆめちから(9.9%)、春よ恋(8.2%)、キタノカオリ(1.9%)、はるきらり(1.0%)、ハルユタカ(0.5%)

【東北】ゆきちから(35.0%)、ナンブコムギ(18.8%)、シラネコムギ(17.1%)、ネバリゴシ(11.5)

【関東・東山】さとのそら(60.9%)、つるぴかり(6.6%)、あやひかり(5.7%)、きぬの波(5.2%)

【東海地域】きぬあかり(40.4%)、あやひかり(18.8%)、イワイノダイチ(14.4%)、農林61号(8.4%)

【近畿】農林61号(56.9%)、ふくさやか(21.1%)、シロガネコムギ(12.0%)

【中国・四国】さぬきの夢2009(47.1%)、せときらら(21.5%)、ふくほのか(17.1%)

【九州】シロガネコムギ(43.1%)、チクゴイズミ(34.4%)、ミナミノカオリ(13.3%)、ちくしW2号(5.2%)、ニシホナミ(2.2%)、ニシノカオリ(1.4%)

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