#507 遺伝子組み換え小麦(GM小麦)

f507遺伝子組み換え作物とは、「遺伝子組換え技術を用い、遺伝的性質の改変によって品種改良等が行われた作物」のことで、略してGMO(Genetically Modified Organisms)と呼ばれています。同様に遺伝子組み換え小麦(GM小麦)は、遺伝子組み換え技術によって品種改良が行われた小麦のことを指します。GMOに関しては専門知識がないため、個人的な判断はできかねますが、その安全性については専門家内でも評価が分かれているようにも感じます。無理を承知でGM小麦について簡単にまとめてみました。

従来からの農作物を改良する方法は、私たちに馴染みの深い「品種改良」という手法です。これは小麦を例にとると次のようになります。簡単のために、小麦Aは「食味:良好」・「色調:くすんでいる」、一方小麦Bは「食味:普通」・「色調:鮮やか」とします。このときAとBを交配すると、4通りの組合せの小麦ができますが、私たちにとって「より良い品種」と言えるのは、「食味:良好」・「色調:鮮やか」となる組合せの小麦です。つまり「食味」が良く、「見た目」も食欲をそそるうどんができるからです。

因みに香川県農業試験場では、平成3年より香川県独自の小麦の育種が始まり、そこで開発された小麦品種には、順番に「香育◯◯号」という系統名が付けられています。初代「さぬきの夢」である「さぬきの夢2000」という品種は香育7号、つまり7番目に開発された品種ですが、これは食感が良好な「西海173号」を母に、色調に優れた「中国142号」を父として生まれた品種です。また2代目「さぬきの夢」である「さぬきの夢2009」は香育21号です。この従来からある品種改良という手法は安全ですが、問題は手間と時間がかかることです。

一方、GMOは遺伝子組換え技術を用い、直接特定の遺伝子の改変による作られた作物です。そしてびっくりするのは、この組み込む遺伝子は、同種ではなく「他の種」からの遺伝子を組み込みことができることです。そこでいつも問題になるのは、GMOの安全性ですが、その評価は「GMOの安全性は十分に検証されている」から「従来にない品種を遺伝子的に造りだすため、その安全性の検証は不十分」などか色々あるようです。繰り返しますが、個人的には適切に判断できる知識がないのでよくわかりません。

ただ現実的には、GMOは実用段階に入っていることは間違いありません。アメリカでは2年前の時点で既にトウモロコシと綿花は90%、大豆は93%、サトウキビは95%がGMOと言われています。小麦においても、研究は進められていますが、幸い(?)まだ実用化には至っていません。「現状の小麦で十分なのに、なぜGMO小麦が必要なのか?」という質問もごもっともです。これについては、現在進行中の研究内容をご覧になると、ご理解いただけるかも知れません:

①高収量品種:沢山収穫できれば農家の人たちは収入アップとなります。
②干ばつ耐性品種:数年前、世界的な干ばつで小麦が大不作となり、小麦価格が暴騰したことを憶えていらっしゃる方もいるでしょう。よって干ばつに強い小麦品種があれば、干ばつでも収量が確保できます。
③除草剤耐性品種:小麦には影響なく、雑草だけが枯れると作業が簡単になります。
④病害虫耐性:病害虫に強い品種ができれば、作業が楽になり、安定的な収量が期待できます。

今後、どのような展開になるのかは予想できませんが、「GM小麦の導入はもはや時間の問題だ」という声も聞かれます。現在73億人を数える世界の総人口は2050年までに97億人、2100年には112億人に達するとの予測もあります。この人口爆発に対応できるにはGMO技術が必要なのかも知れません。