#394 うどんテイスティング・・・ふすま入りうどん

f394「麩(ふすま)」ってご存知ですか?小麦の皮にあたる部分を「小麦ふすま」、もしくは単に「ふすま」といいます。和室にある引き戸もふすまと言いますが、こちらは「襖」と書きます。普通、ふすまといえば、後者を連想する人が多いようです。さてこのふすまというのは、小麦の中で一番硬くて、処理しにくい部位です。小麦とよく比較される穀物に玄米があります。玄米は白米を米ぬかが覆っているものですが、この米ぬか層が、小麦のふすまに相当します。しかし玄米は、白米の部分が硬く、また逆に米ぬか層が軟らかいでの、表面を削るだけで、簡単に白米になります。この作業が所謂精米ですが、その処理は比較的簡単であるので、「コイン精米機」が可能なわけです。

一方、小麦は玄米とは逆に、内部の胚乳部分は脆く、簡単に崩れてしまうのに対し、それを覆っている小麦ふすまは、硬くてごわごわしています。よって胚乳をとり出すために、精米と同じ要領で、表面を削ると、内部の胚乳がぼろぼろと崩れて、ふすまと混ざってしまいます。また小麦特有のクリーズ(粒溝)の存在も、精米方法が不適な理由となっています。というのは、クリーズは小麦の中心部分まで食い込んでいるので、いくら削っても、この部分のふすまが、小麦に混じってしまうからです。

f394_3近代製粉の発展というのは、一言でいえば小麦ふすまの混入を極力抑え、如何に胚乳部分だけを取り分けて小麦粉をつくることができるか、という正にその1点に尽きます。石臼を使用すると、どうしても小麦が過度に挽砕されるので、小麦ふすまが混じってしまい、きれいな小麦粉ができません。よって現在では、小麦は基本的にはロール製粉機によって製粉されています。興味ある方は「小麦粉でできるまで」をご覧ください。では、小麦ふすまはなぜ、それほどまでに敬遠されるのかというと、たとえばふすまが過度に入ったうどんには、次のような問題点があります。

①食味の劣化
小麦の構造上、皮まで挽き込んでしまうとどうしてもクリーズに付着しているちりやほこりなどが、混入しやすくなり、小麦の風味が増しても、こういった夾雑物が小麦粉全体の足をひっぱり、雑味を感じるようになります。
②食感の劣化
小麦ふすまは、強靭な食物繊維なので、通常の粉砕方式では、小麦粉と同じ粒度にはなりません。よってそのまま練り込んでゆでても、ごわごわしたままで、食べても、ふすま片が喉にひっかかり、イガイガして食感が良くないのです。つまり小麦ふすまは、ちょっと挽いたくらいではなかなか小さくならず、またゆでても、喉をすんなりと通過しないのです。
③色調の劣化
小麦ふすまを引きこむとどうしても、色調が劣化します。武蔵野うどんのようにくすんだ色調のうどんを好む地域もありますが、全体でみれば限定的で、一般には白いうどんが好まれます。

しかし小麦ふすまには良い点もあります。それは現代の食生活に不足している良質の食物繊維を豊富に含んでいるからです。そこで無理を承知で、小麦ふすまも、なんとかうまくうどんに取り込むことができないか、少し検討してみました。ポイントは二つ。ひとつは雑味が極力入らないよう、できるだけクリーズ近辺のふすまは使用せずに、きれいな部位だけを使用する。2つ目は、食感を損ねないよう、微粉末可能な専用の粉砕機を使用して小麦ふすまを微粉砕する。この2点に気をつけて、ふすまを微粉砕し、うどんテイスティングをしてみました。画像をみるとどちらが、どちらか一目瞭然でしょう。

色調はどうしても、一般のうどんよりも色が濃くなりますが、これは「くすんだ」というよりも「小麦色」のイメージに近い感じです。また食味も気持ち濃くなったように感じます。そして肝心の食感ですが、小麦ふすまを100μ(ミクロン)以下にまで粉砕しているので、違和感はありませんでした。よってこんなうどんも、「ありかな」と思います。

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