#376 うどんテイスティング・・・タピオカでん粉添加の開発品

営業のO君があるところで開発中の新製品(小麦粉)を是非試したいというので、それを使用したうどんテイスティングを行いました。新製品というのは、小麦粉にタピオカでんぷんを多く配合した「うどん粉」です。タピオカでんぷんは、小麦粉に添加することにより、「モチモチ感」が向上したり、湯で時間が短縮できたりと、いくつかのメリットがありますが、反面小麦粉の風味が薄れるといった弊害もあります。言ってみれば諸刃の剣ですが、使いようによっては利用価値があり、また近年冷凍うどんにおいては多く使われるようになり、かなりの市民権を得ています。

使用したうどん粉は①標準品(小麦粉100%)と②開発品(タピオカでん粉配合品)の2種です。同じ条件で製造し、ゆでたところ、①は17分かかったのに対し②は13分と湯で時間が約20%短縮できました。これはタピオカでん粉の糊化開始温度が低いために、早くα化(ゆであがるためです)されるためです(でん粉の性質)。つまりタピオカでん粉を増やせば増やすほど、湯で時間が短縮できることになります。それにしても20%も湯で時間が短縮できれば、作業効率はかなり改善され、うどん屋さんにとってはかなり魅力的な特長になります。

ゆで上がり後の外観は、①はきれいな淡黄色であるのに対し、②は色調がやや薄い感じがします。人によっては、くすんでいると見えたり、逆に白く見えたりするのでこの辺りは、個人の好みによります。一般的には、淡黄色の鮮やかなうどんが好まれる傾向がありますが、中には武蔵野うどんのように、くすんでいるのを通り越して、かなり色の濃いうどんでないと評価されない地域もあります。また②にはうどんに透明感があるように見えますが、この辺りも好き嫌いは好みによって分かれると思います。

食感については②は、明らかに「モチモチ感」が向上していて、タピオカでん粉の効果が強く実感できます。また表面のつるみ感が増しているので、テイスターの一人であるTさんが、「うどんがつるつると口の中で逃げて、なかなか噛めんなぁ」といった表現がとっても印象的でした。確かにこの滑らかな食感は魅力的で、この辺りが、タピオカでんぷんが支持されている一番の理由であると考えます。

そこでO君に、「もし自分がうどん屋さんを始めるなら、どちらの粉を使う?」と聞いてみたところ、O君曰く「僕だったら、やっぱり②ですかね。個人の好みとしては、①の方がうどんの味が濃くて美味しいので、①を支持しますが、商売となると作業適性などを総合的に勘案して、②の方がうまくいくような気がします」と、要領が得ない答えが返ってきました。つまり自分でうどんを打って食べるなら、小麦粉100%を選択するけれど、商売となると、湯で時間が短い、作業が容易である、また食感が特徴的だといった理由で、②を選択するということらしいです。

ただ食べる頻度が多くなればなるほど、舌が肥えてきてうどんの味がよくわかるようになります。そうなると②では物足りなくなります。よってそんなうどん屋さんばかりになると、またより戻しによって、①を使用したうどん屋さんが見直されると思います。そもそも昔は、うどんといえば小麦粉だけで作られるのが当たり前でしたので、当然といえば当然でしょうか。何れにしても自分で納得したうどんを提供することが肝要かと思います。