#290 乾麺の賞味期限その①・・・3年経過した乾燥うどん

乾麺は、味良し、保存は簡単、そして賞味期限も長いと三拍子揃った、食品の優等生です。ただ湯で時間の長いのが敬遠されてか、近年は人気がやや下降気味でしたが、再びエコブームにのって少しずつ盛り返しているような気がします。特に今年は電力需給が逼迫し節電モードの中、梅雨も明け、今後更にそうめんの消費が加速されるような気配です。みなさんもどうか、エアコンは控えめに、そうめん、ざるうどん、冷やしうどんといった涼麺をご堪能ください。

さて改めて乾麺の賞味期限について考えてみたいと思います。一般に加工食品には、賞味期限が設定されていて、その意味するところは「適切な状態で保存されていれば、十分に美味しく食べることができ、そして商品価値が保たれている期間」ということです(期間の短いものは消費期限)。では具体的にはこの賞味期限はどうやって決めるのかといえば、それは各製造会社に任されています。例えば同じ乾麺でも、「ウチの乾麺は3年経っても十分に美味しいので賞味期限は3年を設定している」という会社もあれば、「1年を経過すれば食感が少し変化する可能性があるので、念の為に1年に設定」という会社もあります。

このとき各社が設定基準の拠り所にしているのが、いわゆる官能試験というものです。これは簡単に言うと「実際に保存しておいたものをゆでてみてその食味試験を行う」ものです。例えば3年間保存しておいたものを、実際に茹でて食べてみて、それでおいしければOK、つまりこの商品の賞味期限は3年にしましょう、となります(実際には余裕をもって設定するので、官能試験で確認した期間よりも短めに設定するのが通例です)。

さて前置きが大変長くなりましたが、弊社に製造後3年を経過したうどんがありましたので、これを最近製造したうどんとの食味試験をしてみました。ちなみにJASでは乾燥うどんの賞味期限は1年を推奨しており、弊社の乾燥うどんの賞味期限は1年に設定しています。

【色調】
①については、製造後3年を経過しているので、自然漂白(酸化作用)され、ゆで後は、少しくすんでいるのに対し、②は淡黄色を呈し、良好でした。
【匂い】
①については、茹でる前は、ほんの少しすえたにおいが認められた。
【外観】
①については、艶がやや失われていますが、製造後3年を経過しているのでやむを得ないところでしょうか(画像では少しわかり辛いですね)。
【食感】
違いが一番顕著なのは、この食感です。①はグルテンの劣化に伴い、粘りが失われているので、「ピンピン」とした食感になるのに対し、②はグルテン特有の粘弾性を有しているので、粘りとモッチリ感が感じられます。しかし人によっては、①の食感を「コシコシ」と歯切れが良いので、プラスに評価されることもあります。一般的なうどんの評価としては、前者の方が「よりうどんらしい」ということになるのでしょうが、この辺りは、好みが分かれるところです。
【味】
①は②と比較すると、僅かに劣化していています。

このように乾麺は、賞味期限を過ぎても品質が極端に劣ることはなく、まったく問題はありません。それよりも注意すべきは保存場所で、たとえ賞味期限内であっても高温多湿であればカビなどが発生することがあるので注意が必要です。つまり賞味期限切れの乾麺でも、目視で問題なければ十分に賞味できるということになります。立場上余り大きな声では言えませんが、みなさんも戸棚の奥に賞味期限切れの乾麺を見つけたら、どうかこのあたりのことを考慮しながらご判断いただければ製造者としては、ありがたいかなと考えます。