#088 2006年さぬきうどんの生産量と一人あたりの消費量

2005年までのうどん生産量は「新着情報#65」で、またさぬきの人が一年間に食べるうどん玉の数については、推定ですが「新着情報#67」でお知らせしました。そして、先日2006年のうどん生産量が発表されたので、少し遅くなりましたが、「新着情報#65」の表を更新しておきます。実はさぬきうどんの生産量は2003年をピークに2年連続で減少したので、2006年はどうなるのか注目していました。で、果たしてその結果は、下げ止まったように見えるものの、3年連続減少と相成りました。

うどんの生産量がこれまでどのような経過を辿っているかは、グラフにすると一目瞭然。 [図1]はさぬきうどん、というか正確には香川県で生産されたうどんだけを、[図2]は、それと全国の生産量の両方を、重ねてみました(詳細な数値は「新着情報#65」を参照)。尚、ここでのうどんとは、生、ゆで、乾燥うどん全ての種類の合計を小麦粉換算したものです。とくとご覧ください。で、これを見て思いつくままに、ざっとまとめてみると:

(1)2003年の数値はどうみても異常だ!
2002年⇒2003年の伸びはあまりに急激で(前年対比118%)、これまででダントツ、最高の伸びを示している。このときは、異業種からのうどん事業参入が相次ぎました。当社にも毎週のように、知らない人が見えて、「これから新規事業でうどん店をやろうと思うんですが、どうすればいいでしょうか?」みたいな相談を受けたのもこの時期でした。

また先を争うように、セルフうどん店の店舗展開が全国各地でおこなわれました。製麺機メーカーの主催したうどん教室は、満員御礼が続きました。あれから4年の月日が経ち、振り返ってみると、当時の熱狂はどうみても普通ではなかったなあ

(2)2006年は減ったとはいえ、まだ高止まりしている
3年連続で減少したとはいえ、ブレークの前年との比較、つまり2006年/2002年比は、60,660t/56,755t = 107%なので、依然としてブーム前に比べて高止まりしているともいえます。で、改めて[図1]をよく見ると、2003年の生産高は、たんこぶのように突出している。もしこのこぶがないとすると、1992年から2006年までは、ずっと同じ割合で緩やかに増え続けていることがわかる。つまり、2003年はやっぱり異常だ。

(3) 前回のうどんブームは?
[図1]を見ると、1985年から1990年にかけても大きな伸びが、あったことがわかります。この時期には何があったのかと思い出すと、そう1988年(S63)に瀬戸大橋の架橋博がありました。このときは日本全国から瀬戸大橋を渡り、さぬきうどんを食べにきてくれました。どこのうどん屋さんも大繁盛、濡れ手に粟とはこのことで、「うどんビル」が建った会社もありました。ただ労せずして売れたので、当然ですが粗製濫造になり、残念ながら、一部よくない噂が聞こえてきたのも事実です。いずれにしてもこの架橋博のおかげで、さぬきうどんが一層全国区になりました

(4)全国のうどん生産量が減少している理由
これはうどんの人気が落ちているというよりも、「食の多様化」が進んでいるのが原因であると、勝手に考えています。飽食の時代と言われる現在、周りにはありとあらゆる食品があります。しかも日本だけでなく世界中から、美味しいものを好きなだけ買うことができます。麺類だけに限っても昔は、うどん、そばしかなかったものが、ラーメン、パスタ、ビーフンなどが加わりました。

普通は、好きなものが7つあれば毎日ひとつずつ、一週間で全種類を食べます。だからおいしい食品の種類が増えると、どうしても個別の食品の当りが悪くなるのは当然です。例えば50年前には、ほとんど見ることのなかった、マカロニ・スパゲッティなどのパスタ類は、今ではうどんに迫る勢いで伸びています。これが食の多様化です。

にもかかわらず、全国では、いまだに毎年30万t近くのうどん(小麦粉換算)が消費され、これは国民一人当り、毎年28玉のうどん玉を食べている勘定になります。だから食の多様化を考慮すれば、うどんはまあまあ、というかかなり健闘していると思います。

(5)改めて「さぬきの人が一年に食べるうどん玉の数」を考える
30年前と今ではどちらが、うどんを多く食べているか?当時は、コンビニはない、スーパーの惣菜コーナーも大したことない、また食品の加工技術や保存技術も今ほどは発達してなかった、などなどを考えると選択肢はそれほど多くなかった。高校の食堂でも、メニューといえば、せいぜいうどん、カレー、チャーハンくらい。こう考えると、簡単でおいしいうどんは、かなり食べていたはずです

これは先ほどの「食の多様化」の逆であって、そう考えると、ここさぬきでもうどんは昔の方が、ずっと多く食べていたはずだと思うのです。これは、今はそんなに食べてないということではなく、今もたくさん食べているけれど、以前はもっともっと食べていたということです。

新着情報#67では、香川県民一人当たりのうどん消費量は、1980年のデータを基に、年間200玉を越えることはないと言いました。だから今では、一人当たり年間200玉よりはかなり少なくなっているのかもしれません。しかし、いずれにしても全国平均の28玉に比べると圧倒的に多いことに違いはありません。いくら「食の多様化」が進んでも、うどんは素材が単純であるからこそ、飽きがこないんだろうな、きっと