#003 「さぬきの夢2000」 Part2 ・・・ そのメリット

ところで、メディアにも華々しく取り上げられ、話題先行の感のある「さぬきの夢2000」ですが、その実力の本当のところは如何なものか、皆さんも関心があると思います。結論から言うと、お世辞抜きに小麦の風味に富んだ、またぷりぷりしたおいしいうどんができます(繰り返しますがうそではありません、本当です)。でもね、ASWに比べるとデリケートな小麦でもあります。事実、一部というかかなりのうどん店からは「作業性に問題あり」との指摘も耳にします。

さぬき産だから味見もせずにおいしいとか、他人の意見を鵜呑みにするとか、また新聞によく記事がでているからというのでは、それこそ裸の王様になってしまいます。本当に「さぬきの夢2000」を振興しようとすれば、その特徴を正確に把握して利用方法を考える必要があります。そこで、ここではメリット、デメリットを洗いだしその実力を客観的に分析してみたいと思います。

メリット
(1) 風味・食感に優れている

最初口にして感じることは、その独特のもちもち感です。人によってはぷりぷりとした感じと表現する人もいます。そしてその後、小麦の風味・甘みが口の中に広がります。これはASWのうどんに慣れ親しんでいる人にとってはかなり新鮮に感じるはずです。これはでんぷん質の特徴によるもので、「さぬきの夢2000」のでんぷん質にはアミロペクチンが多く含まれているので、もちもちとした食感になるのです。

最近はゆで時間が短縮できるからとか、このもちもち感がでるからとかの理由でタピオカでんぷんを小麦粉に混ぜることがあります。でも、これまで何度も言いましたが、小麦粉以外のものを入れると、だんだんと小麦の風味、旨みが薄れてきます。少なくとも私にはそう感じます。しかし、「さぬきの夢2000」には小麦粉特有のソフトなもちもち感があります。そしてこの独特の食感と強い小麦の風味の両方兼ね備えたものが、「さぬきの夢2000」の特長ということができます。アンケートを実施すると、うどんが大好きな人、つまりよく食べる人ほど、うどんのコシそのものよりも味、風味、そしてコシ以外のもちもちとした食感の方を高く評価するとの結果もでています。旨み、風味に乏しいものは食べ続けると飽きてくると言いますが、うどん好きの人もこのあたりのことを評価しているのかもしれません。

また、これらの特長は客観的な比較試験によっても確認されています。実は2004年2月26日に中国四国農政局が中国・四国地域の内麦品質試験を実施しました。これは中四国の内麦18銘柄、他地域の内麦1銘柄そしてASWを加えた合計20銘柄を対象として、製粉性、製麺性(ゆで時間、色、外観、食感、食味)などを比較したものです。そして驚くべきことに「さぬきの夢2000」は100点満点中81.7点を獲得し、79.9点のASWを抑え、堂々の1位に輝きました。総合得点においてこのASWを上回った内麦はこの「さぬきの夢2000」が初めてで、この事実からもその素晴らしさがわかると思います。ただ、この結果は「羊羹をうまく切りすぎた」せいか、正直でき過ぎの感がしないでもありません。でも事実なのです。

(2)国産という安心感
世間一般には国産であれば安全・安心といった社会通念があるように思います。小麦も同様です。確かに港で陸揚げされている、どこでとれたかわからない小麦よりも、目に見える隣の畑でとれた小麦の方が、理由もなくなんとなく安心します。輸入小麦は残留農薬等の問題もあり心配されるのももっともです。しかし、現在小麦は一応曲がりなりにも国家貿易品目として、農水省が水際で検査してくれているので、安全だと思います。無農薬栽培とか、有機栽培とかは確かにありますが、これで全人口をまかなうのはちょっと無理があるし、一旦心配しだしたら切りがありません。多分、農薬は検出されなくても、それはその検出限界では検出されなかっただけの話で、感度をどんどん上げていけば、いまやどんなものからでも検出されるかもしれません。

このように考えてみると、客観的に見た場合、国産が外国産よりどれだけいいのか、よくわかりませんが、それでも国産となったらやっぱり心地好く耳に響きます。それも、国産100%となれば、一層説得力があります。ジュースにしても果汁10%と100%のもの両方あって、どちらを飲みますかと聞かれると、大抵の人は多分100%を選択しますね。うどんも同じです。国産小麦10%使用よりも、さぬき産100%使用のうどんの方が断然受けがいいのです。また最近は地産地消、つまりできるだけ地元で生産されたものを地元で消費しましょうという動きも盛んになりつつあります。そして何にも増して、讃岐でとれた小麦でさぬきうどんをつくる、これが何より自然で当たり前のことです。