#158 今時の小麦製粉① ・・・ 小麦の搬入

昔の小麦製粉は至って簡単でした。小麦を石臼で挽いて、篩(ふるい)にかけ、網の目を通り抜けたものが小麦粉になりました。ただこの方式は簡単ですが、皮の部分が小麦粉に混ざってしまい、パンがごわごわして、食感もよくないという欠点がありました。表皮が混じると食物繊維やビタミン群などが摂取でき、健康には良いのは確かですが、充分すぎるほど食物繊維をとっていた先人達は、それよりももっと白くてふんわりとしたパンを食べたいと思うようになりました。

では「白くてふんわりしたパンを焼くにはどうすればいいか?」。これは表皮が混入することなく、小麦の胚乳部分だけを、いかに取り出すことができるかにかかっています。ところが石臼でいきなり小麦を小さく挽いてしまうと、胚乳も表皮も小さくなり取り分けが不可能になります。そこで先人達は知恵を絞り次のような方法を考案しました。

つまり最初はできるだけ小麦を大きく割り、表皮を傷つけることなく、胚乳の塊だけをとりだします。そして次にこの胚乳の塊についている表皮の破片を取り除いてきれいにし、この胚乳の塊をだんだんと小さくして、最終的に小麦粉の大きさにまでしてやります。こうすることによって、表皮の混入を飛躍的に軽減することができました。

このように現在の小麦製粉は、小麦を少しずつ小さくし、段階的に小麦粉を作っていくので、「段階式製粉方法」とよばれています。この段階式製粉方法は、16~17世紀のフランスで始まったと言われています。この段階式製粉方法を実践しようとすると、多くの機械装置が必要となり、その工程はかなり複雑になります。「小麦粉のできるまで」のところで簡単な説明はしていますが、これだけで理解していただけるとは思っていません(無責任な言い方ですみません!)。そこでこれからしばらく現代の小麦製粉がどのようにおこなわれているのか説明したいと思います。

一番よく利用する林田サイロ

一番よく利用する林田サイロ

①小麦の搬入
現在、日本では年間およそ600万トンの小麦が製粉されています。昔は国産小麦だけでしたが、現在は品質が良くて価格の安い外国の小麦が主流になっています。アメリカ、カナダ、オーストラリア併せて500万トンが毎年輸入され、うどんに最適なASWはオーストラリア西部で耕作されていて、日本に年間100万トン輸入されています(新着情報#019#020)。

一方、国産小麦の生産量はおよそ100万トンで、その半数以上が北海道で耕作され、、次に九州と続きます。香川県にも「さぬきの夢2000」という地場の小麦があり、年間5000トン生産されていて、地場の製粉会社を中心としてさぬきうどん用に製粉されています(新着情報#155#156)。

日本は狭小な地形が多く、小麦に限らず農産物はどうしても生産コストが高くつきます。そのため小麦を自由化してしまうと、競争力の乏しい国産小麦は自立できなくなります。そのため現在は、輸入小麦に一定の金額を上乗せし、その売却益を国産小麦の補助金の原資にあてて、国産小麦を保護しています。

小麦の搬入・・・トラックで搬入するので当社は山工場になります。

小麦の搬入・・・トラックで搬入するので当社は山工場になります。

輸入された小麦は港のサイロに保管されています。よって小麦製粉の第一歩は、サイロへ小麦を取りにいくことです。現在は輸入小麦が主流を占めているので、製粉工場の立地条件としてはできるだけサイロに近いところが、小麦の搬入コストを軽減でき有利です。

実際、新しく建設されている大手製粉工場は、全て港に立地しています。しかも、小麦サイロに隣接しているので、トラックで運ぶ必要がなく、機械で直接工場に搬入でき、このような工場のことを「海工場」とよんでいます。一方、従来の内陸部に立地している工場は「山工場」といいます。また港に近くても、小麦サイロからトラックで運ぶところは、やはり山工場と呼ばれています。

坂出市にはいくつか小麦サイロがありますが、当社が一番よく利用するのは工場から車で5分位のところにある林田サイロです。つまり当社は海に近いところに位置していますが、トラックで原料を運んでいるので山工場ということになります。工場まで運び込まれた小麦は、このようにして工場内に受け入れされます。 ・・・続く。