#636 段階式製粉方法④・・・1Bパッセージ通過後のストックの流れ

段階式製粉方法を実践している現代製粉は、小麦をいきなり小麦粉にするのではなく、小麦の粒を段階的に小さくしながら、最終的には1粒の小麦を50種程度の「上り粉(あがりこ)」に取分けます(#627)。上り粉とは、製粉途中で十分に粒度が細かくなったストックのことで、最終製品(小麦粉)の一部となります。またストックとは、小麦が最終製品(小麦粉)になる途中段階の半製品のことです。小麦は、ロール機とシフター(篩い機)との間を行ったり来たりしながら、最終的にはおよそ50種類の上り粉に取分けられます。

手間暇かかる段階式製粉方法を実践する理由は、小麦のふすま片が小麦粉に混入するのを避けるためです。小麦は、内側の胚乳部が脆く、表面の小麦ふすまが強靭であるため、一度に挽き込んでしまうと、小麦が潰されてしまい、どうしてもふすま片が混入します。そこで面倒でも、辛抱強く段階式製粉方法を実践する必要があるのです。ただ段階式製粉方法を実践する代償として、機械装置類が増えるため、設備が大掛かりになり、その結果製粉産業は装置産業となりました。

工場内部が複雑になると、機械類の配置やストックの流れを正確に記述する必要がありますが、これらの情報をまとめたものをダイアグラム(diagram)といいます。ダイアグラムは、簡単にいうと製粉工場内部の地図みたいなものです。基本的には同じですが、各製粉工場により少しずつ異なります。経験者ば、ダイアグラムを見ただけで、その工場の生産能力などが把握できます。また個々のロール機やシフターで操作される工程をパッセージ(passage)といいます。パッセージとは、道筋とか経路といった意味ですが、ここではストックの流れを示す「工程」として使用されます。

ダイアグラムの一例

ダイアグラムの一例

 

一例を示します。最初に1Bロール機で大きく割られた小麦の粒は、1Bシフターで5種類のストックに分類されます(1Bパッセージ)。一番大きなストックは、2Bロール機で、もう1段階小さくなります(2Bパッセージ)。二番目に大きなストックは、比較的大きなセモリナ(胚乳の塊)が中心のストックですが、「1P」というピュリファイアー(純化機)において、セモリナ(胚乳の塊)と小さなふすま片とが分離されます(1Pパッセージ)。小さなふすま片は軽いために、篩いではうまく分離できません。そこで掃除機のように上部から吸引することで、軽いふすま片だけが吸い上げられる仕組みです。

またピュリファイアー下部は、緩やかな斜面に網の目が細かい順に並び、振動しているので、上から落ちてきたストックは、小さなセモリナから順番に下に落ちる仕組みになっています。つまりピュリファイアーの目的は、ふすま片を取り除くと同時に、大中小のきれいなセモリナに分類することです。そして3番目に大きなストックは、比較的小さなセモリナが中心なので、「3P」というピュリファイアーにて同様の処理が行われます。そして4番目のストックは、まだ十分に篩い切れていないので、「1G」というシフターで再度篩い直されます。

そして5番目のストック、つまり1Bロール機を通過した中で一番小さなストックは、十分に小さくなっているので、これで上り粉となります。そしてこの上り粉以外のストックは、次のパッセージ(工程)に向かい、そこで更に別の処理が続きます。段階式製粉において重要なことは、次のパッセージに向かうストックは、できるだけ粒度を均一にしておくことです(②#633参照)。大きなストックと小さなストックが混在していると、大きなストックだけに圧力がかかり良くありません。徹底した粒度管理が、段階式製粉の要諦です。