#911アミログラフ・・・でんぷんの糊化特性➀

小麦粉に含まれる一番多い栄養成分は、炭水化物です(画像参照)。いま「炭水化物=糖質+食物繊維」という関係があります。また単糖類、二糖類、そして多糖類の3つをまとめて糖質といい、でんぷんは多糖類の一つです。更に小麦粉に含まれる糖質のほとんどはでんぷんで、食物繊維は0.2%程度であることを考えると、小麦粉に限って言うと、「炭水化物≒糖質≒でんぷん」となります。つまりでんぷんは、小麦粉の3/4を占める一番多い栄養成分となります。

よっててんぷんは、小麦粉製品の品質に大きな影響を及ぼすことは明白ですが、とりわけうどんにとってでんぷんは重要です。そこででんぷんの重要な性質である「糊化現象」について復習します。身近な例でいうと、障子の張替えには小麦粉で作った糊を使用しますが、これは小麦粉の「糊化」の性質を利用したものです。

鍋に小麦粉と水を入れ、かき混ぜながら加熱すると、だんだんと粘りがでてきます。つまりでんぷん粒は、ある温度に達すると、水を吸収して膨らみ始めます。(膨潤)。その後加熱を続けると、更に膨張し続け、最終的には吸水することによって体積は元の数倍に膨らみます。ではもうこれ以上膨れることができなくなったとき、加熱し続けるとどうなるか?それは風船と同じで破裂してしまい(破壊)、バラバラになってしまいます(分散)。この一連の過程をでんぷんの「糊化現象」といいます(画像参照)。

でんぷん粒は膨れるにつれて粘度が大きくなりますが、崩壊によって一気に下がります。つまり水に溶いた小麦粉をかき混ぜながら加熱し続けると、その抵抗はだんだんと大きくなりますが、あるときを境にサラサラ状態になります。これはでんぷん粒が崩壊した状態です。個々のでんぷん粒が大きくなると、容器全体の体積は変わらないので、徐々に身動きがとれなくなり、その結果粘度が大きくなることは直感的にも理解できます。このときの粘度の変化をグラフにしたのが粘度曲線です。

どの小麦粉も、つまりどの小麦粉のでんぷん粒も似たような形のカーブ(粘度曲線)を描きますが、それぞれ少しずつ異なります。また同じ小麦粉であっても、加える水の量や加熱方法の違いによって、当然粘度は異なってきます。そこで小麦粉の粘度曲線を、正確にまた客観的に計測できるようなルールを作っておく必要があります。そこで現在ではドイツのブラベンダー社が開発したアミログラフをいう計測機械を使用するのが一般的です(画像参照)。

この測定方法は次のようなものです。最初に水450mlに小麦粉65gを加え、それを攪拌しながら1.5℃/分(毎分1.5℃)の割合で温度を上げ、94.5℃まで上昇すると、今度はこの温度を保ったまま攪拌を続けます。一方、温度が60℃近くになるとでんぷん粒が急激に膨張を開始するので、この点を糊化開始点、そしてこのときの温度を「糊化開始温度」とよんでいます。更に攪拌と加熱を続けるとやがて粘度は最高となり、その後は下降に転じます。この最高となる粘度を「最大粘度」といい、この時点の温度を「最大粘度温度」といいます。

でんぷん粒が崩壊を始めると、粘度が低下し始めます。つまりそれまでねばねば、ドロドロだったものがサラサラに変わります。この現象を「ブレークダウン」といい、サラサラになった状態での粘度を「ブレークダウン粘度」、そしてピーク粘度(最高粘度)とブレークダウン粘度との差のことも「ブレークダウン」といいます(画像参照)。蛇足ながら粘度の単位はBU(ブラベンダーユニット)といいますが、これはブラベンダー社が独自に設定した単位です。またこのときの粘度曲線を「アミログラム」といいます(アミログラフに似ているので紛らわしい!)。