#842 スペルト小麦・・・7つの疑問に答えます!

スペルト小麦とは通称「古代小麦」として最近注目を浴びている小麦ですが、その実態はイマイチよくわかりません。そこで製粉振興#621(2022年11月号)に「スペルト小麦について(池田達哉著)」なる記事が掲載されていましたので、簡単にご紹介いたします。以下、簡単に記事内容をまとめ、その後に個人的感想を述べます。

スペルト小麦は、ヨーロッパでは青銅器時代から栽培されているため、パン小麦の祖先種とみなされ古代小麦と呼ばれています。しかし近年の遺伝子解析の結果、スペルト小麦はパン小麦にエンマー小麦が交雑して派生的に生じた比較的新しい種と考えられ、パン小麦祖先種とは言えません。つまり現在栽培されている古代小麦は、何千年も前の遺跡から当時の状態で保存されたものではなく、現在に至るまで特定の地域で栽培され続けられてきたものです。よって何千年も前の古代小麦と同一ではなく、古代小麦という呼び方は、マーケティングでの通称とみなした方が自然です。つまり古代小麦というよりも、パン小麦に近縁の在来種、または伝統的な品種と呼ぶのが適当です。以下現在の「スペルト小麦」ついてのまとめです。

(Q1)スペルト小麦は栄養価が高い?
全粒粉での比較において、水溶性食物繊維を含む総食物繊維では、スペルト小麦の方が少なく、ビタミン類ではほとんど差はありません。またミネラル類についてはスペルト小麦の方が多いですが、これらの成分は表皮部分に多く含まれるため、全粒粉で使用すればパン小麦でも多く摂取することが可能であり、結局栄養価的には大きな差異はないといえます。

(Q2)スペルト小麦は低GI食?
スペルト小麦は、低グリセミックインデックス(GI)食品で血糖値が上がりにくいと言われていますが、灰分0.5%程度の粉で比較した場合、パン小麦とスペルト小麦ではGI値に違いは見られません。

(Q3)スペルト小麦は小麦関連疾患になりにくい?
小麦関連の疾患としては、小麦アレルギー、セリアック病、グルテン過敏症などがあります。スペルト小麦は、パン小麦に比べて総タンパク含有量、グルテンタンパク質含有量ともに多い傾向にあり、特にグリアジンの割合が多いと報告されています。グリアジンは小麦アレルギーのアレルゲンであることから、スペルト小麦が小麦アレルギーになりにくいとは言えません。

(Q4)スペルト小麦の製パン性は?
スペルト小麦はパン小麦に比べてグルテンタンパク質含量が多い傾向にありますが、製パン性に重要な生地弾性に寄与するグルテニンが少なく、粘性に寄与するグリアジンが多いために生地が弱く、製パン性に劣るものが多いようです。

(Q5)スペルト小麦は独特の風味と香りがある?
スペルト小麦でも品種によって風味と香りが大きく異なり、スペルト小麦だから美味しいとは言えないようです。

(Q6)スペルト小麦は無肥料・無農薬栽培に適する?
窒素肥料が適度な条件下ではパン小麦の方の収量が多く、窒素肥料が少ない条件下では、どちらも収量が低下するが、スペルト小麦の方が収量の低下が少ない。

(Q7)スペルト小麦は病気に強い?
赤さび秒、うどんこ病、葉枯病に対する抵抗性について調査したところ、スペルト小麦はパン小麦並みかそれ以下の抵抗性しか見られなかった。

【個人的な感想】
確かに何千年前の遺跡の壺からでてきた小麦を播いたのならば、「古代小麦である」と言われ納得します。しかし実際は遺伝子解析により出自が明らかになったので、古代小麦と呼ぶにはちょっと抵抗があります。また小麦としての性質もパン小麦と古代小麦との間にそれほど差異があるとも思えません。よって「古代小麦」というネーミングは、マーケティング的な意味合いが強く、実情を反映したものではないと感じました。