#816 小麦粉の魅力(製粉振興会刊)

小麦粉の普及促進と製粉産業の振興を図る(一財)製粉振興会から小麦粉についての冊子「小麦粉の魅力(再改訂版)」が発刊されましたので、簡単にご紹介いたします。これは小麦粉の説明、消費量、小麦粉製品、世界の小麦事情、小麦の歴史などがコンパクトにまとめられた101頁の冊子です。初版は平成15年に発刊、平成20年に改訂版、そして令和4年5月に再度アップデートされ、業界関係者に配布されました。また一般の方にも送料負担でご入手できますので、興味ある方はぜ是非どうぞ(製粉振興会)。以下、個人的に参考になった箇所を列挙してみました。

①小麦粉の色
小麦粉本来の色は、淡いクリーム色(淡黄色)ですが、これは小麦粉に含まれるカロチノイド系色素が発色するためです。そしてパスタの原料であるデュラム小麦には、更に多くのカロチノイドが含まれるので、パスタは黄色くみえます。また小麦粉には、フラボノイド系色素も多く含まれますが、これはかん水(アルカリ性)に反応して黄色く発色するので、中華麺は黄色いのです。

②小麦粉の粒度
小麦粉はどれも見た目は同じでも、パン用強力粉は、触るとザラザラとした粗い粒ですが、菓子用薄力粉は、細かくスベスベして手にまとわりつく感じです。とは言うものの初めての経験では、なかなか違いが実感できないかもしれません。

③食物繊維減としての重要性
昔は、食物繊維は栄養面では、無用の組成物と考えられていました。しかし1972年ごろから、食物繊維が不足すると、消化器系統に障害がでることがわかってきました。また食物繊維は血圧降下作用もあることがわかっています。さらには便通が良くなり、満腹感をますので、肥満防止にもなるなど良い事ずくめです。小麦粉1人前(90g)には約2.4gの食物繊維が含まれ、小麦全粒粉には、なんと10gが含まれます。

④生食は避ける
小麦粉はそのまま生で食べることは想定されていません。必ず加熱してから召し上がってください(#568)。

⑤遺伝子組換え(GM)小麦
現在、日本が輸入している小麦にはGM小麦はありません。日本の製粉業界は「消費者が受け入れない原材料を使用することはできない」という立場です。

⑥世界の小麦生産量
世界の小麦生産量は、2014/15年度に初めて7億tを突破し、それ以後、毎年7億t以上を維持しています。その内、食用消費量は5.405億tで、これは総消費量の69%に相当します。小麦の可食部を75%とし、世界人口を79.54億人とすると、一人当たりの年間消費量は、約51kgとなります。

⑦日本の小麦消費量
令和2年度の小麦需要641万t(内国産95万t)の内、食用は80%の514万tとなります。可食部を75%、人口1.26億人とすると、一人当たりの年間消費量は、約31kgとなります。

⑧日本の小麦事情
国産小麦は、栽培様式からみると水田裏作と畑作の両方が混在しています。日本の小麦栽培は、大規模栽培が可能な北海道を除き、農家ごとの作付面積が小さいのが特徴です。そのため生育環境が多様で、品種も多く、その結果小麦品質にも大きなばらつきが生じています。

⑨輸入小麦
令和2年度には、アメリカ(263万t)、カナダ(1974万t)、オーストラリア(80万t)から合計544万tの小麦を輸入しています。アメリカからはパン用小麦DNS(ダーク・ノーザン・スプリング)と菓子用小麦WW(ウエスタン・ホワイト)を輸入。カナダは世界で最も良質のパン用小麦の生産国といわれています。輸入品種は1CW(No.1カナダ・ウエスタン)です。オーストラリアからは中華めん用に好適なPH(プライム・ハード)とうどん用小麦として有名なASW(オーストラリア・スタンダート・ホワイト)を輸入しています。現在のASWは、APW(オーストラリア・プレミアム・ホワイト)とANW(オーストラリアヌードル小麦)を一定割合でブレンドしています。