#776 現代のパスタ事情

パスタといえば乾麺のライバル。先日、業界紙「製粉振興#612」に「パスタ産業の概要(田村亮二 著)」という記事が掲載され、興味深く読みました。現在のパスタ事情が、手際よくまとめられていましたので、以下簡単にまとめてみました。

パスタ(Pasta)とは、簡単にいうとデュラム小麦という超硬質(とても硬い)小麦を原料とする麺製品です。形状は、スパゲッティに代表される麺状の細長いロング・パスタと、マカロニなどのショート・パスタに大別され、世界中にはなんと1,000種類以上の形があると言われています。小麦は世界中で、年間7億6400万t(2019/2020)生産されているのに対し、デュラム小麦の生産地は、北米、イタリア、トルコなどに限られ生産量は、3400万tと、小麦の4.5%にしか過ぎません。

日本にパスタが最初に持ち込まれたのは、幕末の頃、横浜の外国人居住地であると言われています。明1883年(明治16年)には、フランス人宣教師のマリク・マリ・ド・ロ神父が長崎市にマカロニ工場を建設。そして第二次世界大戦前には、全国で年間200トンほどの生産量があったとされ、1954年(昭和29年)には年間2,000トン規模までに拡大します。1955年には、イタリア製の当時最新鋭のマカロニ製造機が導入され、この年のパスタ生産量は3,770トンまで伸長。この1955年は、日本のパスタ元年と言われています。

ただ当時は、日本にはデュラム小麦はなく、原料にはパン用小麦粉(強力粉)が代用されていました。1965年(昭和40年)になると国内でのデュラム・セモリナの製造が開始されますが、小麦粉原料のパスタ味に慣れていたせいか、その後暫く、小麦粉とデュラム・セモリナの併用が続きます。そして1986年(昭和61年)からその翌年にかけて、パスタ原料は、ほぼデュラム・セモリナ100%化が達成されます。

日本におけるパスタ供給量は(国内製造+輸入)、画像の通りです。パスタ元年の1955年から供給量は一気に伸び、その急成長は1999年まで続きます。その後一時的に減少するものの、2002年から再び増加傾向に転じ、2011年をピークに、30万トンを目前に一進一退を繰り返します。そして2020年は、巣ごもり需要の追い風により、一気に32.8万トンとなります。輸入パスタは、1980年頃から増加し、最近では供給量のほぼ半分を占めるまでになりました。

さてパスタの国民一人辺りの消費量が多い上位5カ国は、多い順にイタリア23.5kg/年、チュニジア17.0kg/年、ベネズエラ12.0kg/年、ギリシア11.1kg/年、チリ9.4kg/年となります。パスタ発祥の地イタリアがトップであるのは予想通りで、100gを1食とすると3日に2回は食べている計算になります。

日本で生産される小麦粉製品(2020年)は、小麦粉ベースで年間453.2万トン(麺類151.6万トン、パン126.5万トン、プレミックス36.1万トン、ビスケット25.3万トン)。そして麺類の内訳は、生麺74.0万トン、即席麺41.2万トン、乾麺19.7万トン、マカロニ類16.7万トンとなります。パスタ供給量(前述)は、32.8万トンなので、これからマカロニ類16.7万トンを引いた16.1万トンが輸入となります。

乾麺の内訳は、うどん・そうめん・ひやむぎ・そば・手延そうめんなどの和風麺です。かつては35万トンの需要があったので、それと比較するとかなり減少していますが、その理由は乾麺の魅力がなくなったのではなく、麺の多様化にあります。つまりうどんを例にとっても、かつては店頭のうどん玉か乾麺の二者択一であったものが、加工技術の発達により現在では、冷凍うどん、チルド麺、調理麺、即席麺などの様々な選択肢があります。ということで、日本伝統の食品である乾麺も、今後とも宜しくお願いします。