#596 粉塵爆発事故に対する課徴金180万ドル

f596粉塵爆発(dust explosion)とは、可燃性の粒子(粉塵)が、一定条件下で空気中に浮遊しているとき、発火源が近づくと引火して爆発することを言います。この可燃性の粒子というのは、実に種類が多く、例えば石炭の粉、小麦粉、砂糖、コーンスターチ、でんぷん、金属粉、コピー機のトナーなど、ほぼ何でも粉にしてしまえば、「可燃性の粉塵」となります。小麦粉やコーンスターチなど、一見爆発とは何の関係もないような物質でも、空気中に一定濃度で浮遊すれば、極めて危険な爆発物となります(砂糖による粉塵爆発の実験)。

そして2017年5月31日(水)夜11:00頃、アメリカ・ウィスコンシン州カンブリア村にあるディディオン(Didion)トウモロコシ製粉工場に於いて大規模な粉塵爆発が発生しました。この事故に対処するため、近隣からは12の消防隊そして4地域の警察隊が駆けつけ、犠牲者は救急車やヘリコプターで病院に救急搬送されました。この粉塵爆発の規模は近年稀にみる規模で、多くの建物は吹っ飛び、死亡者5名そして重傷者を含む怪我人12名という大惨事となりました。またこの粉塵爆発により、辺りは一時停電し、近隣の学校は用心のために翌日は休校となりました。

アメリカでは昨年、穀物に関する5件の粉塵爆発が発生し、その内2件が死亡事故を伴うものだったというパーデュー大学の報告もあります。日本では爆発事故のかなりが粉塵爆発に関連していると言われていますが、穀物関連の粉塵爆発は余り聞いたことがありません。アメリカは農業大国であるだけに、製粉工場やサイロが多く、その結果穀物関連の粉塵爆発が多くなると推察されます。

事故の原因究明にあたった米国労働安全衛生局(OSHA)は、作業中に発生する穀物ダスト(ちりやほこり)を適切に管理せず、法令を遵守していなかったことが今回の粉塵爆発事故の原因であるだろうと結論づけています。また従業員に対して普段から粉塵爆発に対する認識及び危険性を説明し、その対応策をキチンと教育しておけば、防ぐことができたであろうとも、付け加えています。この事故によりOSHAはディディオン製粉会社に対して、2017年11月17日、$1,837,861(約2億円)の罰金を課すことを決定しました。

実は今回の事故はいきなり起こったわけではなく、前段階があったようです。この工場では200人が勤務し、トウモロコシを製粉および加工し、コーングリッツ、コーンミール、コーンフワラー(とうもろこしの粉)といった食品からエタノール燃料まで幅広く製造しています。そしてOSHAは2011年1月にこの工場を調査したところ、粉塵爆発の危険性に対する十分な対応策がとられてないとして、2011年4月迄に不備な点を改善するように指導しています。しかし会社側は十分な対応をとらなかったために、3,456ドルの罰金の支払いを命じられたようです。

粉塵爆発といえば、歴史的にはウォッシュバーン製粉工場が余りに有名です。ミネアポリスにウォッシュバーンAミル(第一工場)が建設されたのは1874年のことで、これは当時世界最大の製粉工場でした。そしてそのAミルは1878年、5月2日の夕方7時過ぎ、突然大爆発を起こします。当時は、工場内における粉塵処理が十分でなかったために、製粉工場内では至るところで、小麦粉が粉塵となって舞いあがり、これに引火して爆発を起こしました。

ランプが倒れたからとか、石臼がストックのない状態で、空運転したから火花が飛び散ったとか、色々言われていますが、引火の原因はよくわかっていません。ただこの粉塵爆発の威力は凄まじく、一瞬のうちに工場全体を破壊し、14名の作業員が亡くなりました。また延焼により更に4名が亡くなり、他の5つの製粉工場も爆風で壊れてしまいました。この爆発で、ミネアポリス全体の製粉能力は、約半分になったといわれています。粉塵爆発は、いつどこでも起こる危険性があります。十分に気をつける必要があります。