#527 「栄養成分表示」・・・その①

食品の栄養成分表示が義務化されます。

食品の栄養成分表示が義務化されます。

飽食の時代を迎えた現在、私達の身の回りには、美味しい食材がごまんとあります。少し気を許すと、ついつい必要以上に食べ過ぎ、栄養摂取過多となります。そして栄養過多の生活は、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧、肥満といった疾患の原因となります。これらの疾患は生活習慣病と言葉で総称されますが、毎日の食生活や運動習慣に起因しているという意味で、旨いネーミングだと思います。よって誘惑の多い現在の食生活において、健康的な生活を維持するためには、食習慣や生活習慣に対し意識的に取組む必要があると思います。

とりわけ「食べ過ぎ」は直ちに「肥満」に繋がるために、食事による摂取カロリーについての認識は大切です。加工食品をみただけでは、どんな栄養成分がどの位含まれているかは不明であるため、ニーズに応え、わかりやすく表示したのが「栄養成分表示」です。「食品表示法」は平成27年4月1日に施行され、原則として加工食品及び添加物に対し、栄養成分表示が義務化されます。その内容を以下、簡単にご説明いたします。尚、加工食品及び添加物に対する表示の猶予期間は5年間(平成32年3月31日まで)ですので、その期間の表示は任意ですが、平成32年4月1日以降は、表示が義務となります。

「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン(平成27年3月消費者庁食品表示企画課)によると、栄養成分表示が義務化された栄養成分は、以下の5成分で、表示の順番もこの通りでなければならない、とあります。
①熱量(kcal)
②たんぱく質(g)
③脂質(g)
④炭水化物(g)
⑤食塩相当量(g) ・・・ 但しナトリウム塩を添加していない食品のみ、ナトリウム量の併記が可能。

3大栄養素である炭水化物・たんぱく質・脂質、そして全体としての熱量(エネルギー)の表示は当然ですが、直接熱量に寄与しない食塩相当量の表示が義務化されている理由は、「食塩の過剰摂取と高血圧との関連性」にあると推察します。また⑤について、ナトリウム塩を添加していない食品の場合は、「ナトリウム◯◯mg(食塩相当量△△g」と表記することも可能です。しかしナトリウム◯◯mgと言われてもなかなかピンときません。

「ナトリウム塩を添加していない食品だけは、なぜナトリウム表記がOKなのか?」は、謎ですが、「ミネラルの一成分をそのまま表記しているだけです」と言われればそれまでです。ただミネラル表示にすれば、「塩分をイメージさせにくい」からかなとも思います。蛇足ながらナトリウム重量に2.54を乗じた値が食塩相当量となります。個々について色々説明するよりも実例を挙げて示した方が分かりやすいので、以下弊社に関連する食品について説明いたします。大筋では正しいとは思いますが、もし誤り等あれば、それは当方の理解度の不足ですので、謹んでお詫び申し上げます。尚、実際の表示においては東京都福祉保健局の「栄養成分表示ハンドブック」が大変参考になりました。

【ナトリウム塩を添加していない場合の例・・・小麦粉】
下記に小麦粉100gの場合について3通りの表記法で表示してみました。小麦粉①は、一番簡単な表記で、基本5成分を表示しています。「食品成分表2015」では小麦粉にはナトリウム2mgが含まれるとありますが、「5mg以下の場合は0と表示することができる」と規定されているので、「0g」と表記しました。またエネルギーについては、アトウォーター(Atwater)のエネルギー換算係数を用い、たんぱく質、脂質、そして炭水化物のエネルギーを、それぞれ4kcal/g、9kcal/g、4kcal/gとして計算しています(#254)。

小麦粉②は、炭水化物を内訳表示しています。内訳表示というのは、ある成分を更に細分化して表示することです。炭水化物を例にとれば、「炭水化物=糖質+食物繊維」という関係があるので、ここでは炭水化物(74.7g)を糖質(64.8g)と食物繊維(9.9g)により内訳表示しています。更に小麦粉はナトリウム塩を添加していない食品なので、ナトリウム表示が可能です(小麦粉③)。小麦粉②と小麦粉③とを見比べると、「食塩相当量」よりも「ナトリウム(食塩相当量)」の方が、食塩のイメージが薄まるかも知れません。また同じ小麦粉でもエネルギーが361kcalと341kcalとで異なる理由は、食物繊維のエネルギー換算係数を2kcalと計算しているからです。どちらも誤りではありませんが、詳細は#255をご覧ください。

小麦粉の栄養成分の表示例

小麦粉の栄養成分の表示例