#492 全粒粉はカロリー89.6%、糖質82.7%(対小麦粉)

f492飽食の時代である現在、私たちの廻りには美味しい食品が溢れかえり、ついつい食べ過ぎることも珍しくありません。そのせいか食品に含まれるカロリーが気になる方も多いと思います。そこで改めて食品のカロリー計算方法についてまとめてみました。食品のエネルギーは、その食品に含まれているたんぱく質、脂質、そして炭水化物の量によって決まりますが、その計算方法には大きく分けて2つあります。

【1】アトウォーター(Atwater)のエネルギー換算係数を用いる方法
食品のエネルギーは、それに含まれるたんぱく質、脂質、及び炭水化物に対し、それぞれ決まった係数を掛け、合計することで求めることができます。その係数はたんぱく質が4kcal/g、脂質が9kcal/g、炭水化物が4kcal/gとなり、それぞれを「エネルギー換算係数」といいます。例えば食品Aには100g中、たんぱく質が10g、脂質が5g、そして炭水化物が70g含まれていたとすると、100g当りのカロリー(エネルギー)は、10×4 + 5×9 + 70×4 = 40 + 45 + 280 = 365kcalとなります。

これらのエネルギー換算係数は、アトウォーター先生の研究により求められたので、アトウォーターのエネルギー換算係数と呼ばれています。普段私たちが購入する加工食品の裏面に表示される栄養成分は、このアトウォーター換算係数を使用しているものがほとんどです。ただアトウォーター換算係数は簡単で便利ですが、あくまでもアバウトな数値です。つまり厳密に言うと、たんぱく質、脂質、炭水化物の体内での消化吸収率や代謝率は、食品毎に異なるため、1種類の係数で全ての食品のカロリーを正しく表示することはできません。

f492_4【2】個別の食品毎にエネルギー換算係数を用いる方法
そこで食品毎にこのエネルギー換算係数を求めてやれば、厳密に食品毎のエネルギーを計算することができます。但し、全ての食品について換算係数を求めるのは膨大な予算と時間が必要であり現実的ではありません。そこで一般には主要な食品については、個々の換算係数を求め、それ以外はアトウォーターの換算係数を用いるのが一般的です。実際、日本において標準ともいえる「食品成分表」においても、次の3つのエネルギー換算係数を利用しています。
①科学技術庁「日本人における利用エネルギー測定調査」に基づくエネルギー換算係数
②FAOのエネルギー換算係数
③アトウォーターのエネルギー換算係数

言い換えると、同じ食品であっても3通りのカロリー表示が可能ということです。もちろん③よりも①や②の方がより正確であることは言うまでもありません。FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations)は、国際連合食糧農業機関という国際機関であるので、私たち日本人にとっては、②よりも①の方がより実情に即したものかも知れません。また①は日本人の食生活でよく消費される食品については充実しているのに対し、②は国際的な見地から測定食品の選定が行われています。

一例を挙げると、お米は日本人にとって主食であるため、①では、玄米、半つき米、七分つき米、精白米などコメ関連だけでも、5種類のエネルギー換算係数が用意されています。一方、小麦関係になると②の方が充実していて、全粒粉に対しては①では提供されず②のみとなります。以上を基に代表的な穀物のエネルギー換算係数を下に表示してみました。
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次にこれら個別のエネルギー換算係数を使用して、各穀物100g当りのエネルギーを求めたものが次の表です。つまり強力粉は100g当り366kcalであるのに対し、全粒粉は328kcalとなり、約89.6%のカロリーとなります。10%カロリーが少ないということは、全粒粉だと同じカロリーで小麦粉よりも10%余分に摂取することができます。また小麦ふすまが入っている分、余計に咀嚼する必要があるため、より満腹感が得られ、しかも食物繊維は4.2倍(食物繊維は100g中、強力粉は2.7gに対し全粒粉は11.2g)と良いことずくめです。

更に糖質についての利点もあります。食品成分表によると、強力粉と全粒粉の100g当りの炭水化物は、71.6gと68.2gです。「炭水化物=糖質+食物繊維」という関係から、両者の糖質は71.6-2.7=68.9g、68.2-11.2=57.0g。よって57.0÷68.9=82.7%となり、全粒粉は小麦粉と比較して、糖質17.3%カットとなります。
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