#379 新銘柄「さぬき一番粉」

販売されている業務用小麦粉の銘柄(種類)というのは、意外に多く、同業者であっても、びっくりすることがあります。特に規模が大きくなると、優に100銘柄は超えます。中には戦略的な意図もあるのか、ほとんどそっくりな小麦粉であるにも拘わらず、銘柄が違うこともあるので、これも銘柄が増える一因かと思います。

ただ銘柄が増える傾向にあるのは、ある程度致し方ない点もあります。例えば小麦粉の種類は、大きく分けて強力粉・中力粉・薄力粉の3種類。またグレード(等級)は特等粉・1等粉・2等粉・3等粉の4等級あるので、単純に掛けあわせても、最低でも12種類はできることになります。よって少し規格をいじると、すぐに3つや4つの銘柄が増えることになります。よって多くなるのはやむを得ません。しかしそれでも周りを見渡すと、「やっぱり多いなあ」と率直に感じます。

うどん用に限っていえば、弊社では現在5銘柄が基本となっています。もしユーザーのご希望があり、数量がまとまればオーダーメードの小麦粉を製造することも可能ですが、できれば基本銘柄の中からお選びいただくようにお願いしています。その理由の一つとして、これら基本銘柄は私たちが製粉現場で長年製造し続けてきた中で、これらの品質であれば、きっと皆さんに満足していただけるであろう判断し、製品化した商品だからです。

また銘柄を絞り込むことで、小麦粉の鮮度管理が容易になることも大きな理由です。小麦は粒の状態では、その性質を変えることなく長期間保管することができますが、一旦製粉して粉になった時点からは酸化が始まり、長期間保管すると徐々に品質の劣化につながります(#123)。よって多品種小ロットの鮮度を維持管理することは、かなり非効率的な作業になります。よってそうするよりも代表的な銘柄を決めておき、それらをできるだけ早く回転させる方が、結局高品質のうどんづくりにつながると考えます。

前置きが長くなりましたが、そういった状況であるにも拘わらず、今回敢えて新製品を販売することになりました。銘柄は「さぬき一番粉」といいます。これは当社の従来の麺用小麦粉とは異なる、全く新しいコンセプトのうどん専門店用小麦粉です。さぬき麺機㈱様との共同企画&開発商品、というかどちらかといえば先方様のご意向により製品化に至った銘柄です。基本的な考え方としては、うどん業界において経験の乏しい方に、如何に満足のいく、そして安定した讃岐うどんを製造していただけるかという点です。

経験を積んだご主人が経営するうどん店であれば、最高の品質の小麦粉で最高のうどんを打ち、それをご提供することができます。しかし一方で、店舗展開を目指しているので、経験豊富な人材を手当てできない、また繁忙期に大勢のお客様を、お待たせすることなく対応したい、といったご要望もあります。「さぬき一番粉」は、充分な経験のない方でも、製麺機の基本手順さえ守れば本格的な讃岐うどんを作ることができるようにと、企画されました。具体的には、加工でん粉を配合することにより、大量のオペレーションにも対応できるよう、またゆで時間の短縮、またゆで後の劣化防止といった点にも配慮されています。

食品を評価する基準としては、大きく食味(テイスト)と食感(テクスチャー)の2つがあります。どちらも同様に重要な基準で、どちらを優先するかは個人的な好みに大いに影響されます。よって個人的には、食味優先ですが、中には食感重視の方も当然いらっしゃいます。「さぬき一番粉」はどちらかといえば、食感、作業性重視の小麦粉といった位置づけになります。今後共よろしくお願いいたします。