#363 世界初の近代的製粉工場・ウォッシュバーンCミル・・・①

小麦製粉というのは、古代エジプト時代よりもずっと以前の、少なくともおよそ2万年位前から続けられてきたことが様々な調査からわかっています。最初は石で叩いて潰していたものが、やがてサドルカーン(生姜摺りみたいなもの、#187)という道具が考案されると、前後運動(往復運動)によって粉ができるようになります。そして紀元前1000~500年になるとやっとロータリーカーンと呼ばれる、石臼の原型である回転式の道具が登場します(#191)。回転運動により、水力や畜力といった人間以外の力が利用できるようになり、これは製粉史上、実に革命的な出来事でした。

その後石臼は、近代になるまで延々と使用され続けます。もちろん関連技術、応用技術においては色々と開発されますが、「小麦を挽く」という基本的な作業は、2000年以上に亘り全て石臼で行われていました。現在の製粉機の主流はロール製粉機ですが、これが実用的な段階に入るのは19世紀後半で、それは今から僅か100年余り昔の話です。さて近代的な製粉工場はどういうものかと言えば、それは次の3つの条件を満たしている必要があります:

①全ての工程が自動化されていること
これは小麦を搬入してから、最終的に小麦粉ができあがるまで、人間の手を介さないということです。但しこれは、ボタン1つ押せば素晴らしい小麦粉ができるということではありません。ロール機を始めとするすべての機械の調整は、あくまで熟練技術者に依存します。ただ自動化により、人間が単純作業から開放されるということです。

②段階式製粉方法を実践していること
小麦製粉を行う上で一番のポイントは、「いかに表皮部分が混入することなく、胚乳部分だけを取り出すことができるか」という点です。表皮部分が混入すると、うどんにしたときに色調がくすんだり、また食感がザラザラしたりするからです。よって一般には表皮ができるだけ入らないほうが望ましいと言われています。しかしいきなり小麦を押し潰してしまうと、両者がぐちゃぐちゃになってしまい、そうなってはもはや取り分けることは不可能になります。

それを回避するには、先ず小麦を大きく割り、表皮のついた部分と、そうでない部分とに分けてやります。次に両者を別々の異なるロール製粉機で、更にもう一段階小さく砕き、篩にかけてやります。そしてこのような作業を最終的に小麦粉ができるまで続けます。つまり小麦を少しずつ小さくしながら、最終的に小麦粉にする方法を「段階式製粉方法」といい、これが現在の製粉方法です。製粉工場の仕事とは、「小麦の胚乳部分をきれいにとり出す」という実にシンプルな作業ですが、これを上手に行うには「段階式製粉方法」が不可欠で、これが製粉工場にたくさんの機械が並んでいる理由です(#161)。

③石臼は使用せず、全てロール製粉機を使用していること
石臼はどんなに注意深く目立てをして、正確に取り付けても、ロール製粉機のような正確性が実現できません。よって各製粉工程でのストック(小麦粉になる途中段階の半製品)の粒度管理がうまくできず、段階式製粉方法がうまく実現できません。更には、石臼はその大きさの割には粉砕能力が低く、大量生産に向かないという問題点があります。また石臼は目立ての費用が高くつき、経済性の面でも生産性の高いロール製粉機に劣ります。

では以上の3つの条件を満たした、世界最初の近代的製粉工場はどれかというと、それが前回ご紹介したウォッシュバーンCミル(1879年6月)になります。粉塵爆発で木っ端微塵になった工場跡地に、当時最新鋭の製粉工場が建設されます。前回(#362)では、ウォッシュバーン製粉工場は、歴史的にみてとても重要であると申しましたが、その理由はそれが近代的製粉工場第1号であったからです。