#344 お米・大麦・小麦の需要の推移

主要穀物と言えば、お米、小麦、大麦ですが、これらの需要がここ50年間でどのように推移したのか、調べてみました。農水省のHPには、こういったデータが全てエクセル形式で利用できるので、ダウンロードした後、グラフにしてみました。一見無味乾燥な数字のデータもグラフにすると、よくわかります。

①お米
1960年には国内で1286万tのお米が生産されましたが、2010年には856万tと、約2/3にまで減少しました。お米は減反に次ぐ減反で作付が減った結果です。生産量は2/3になりましたが、その間に人口は増えたので、結局1人当たりのお米摂取量は、半分になりました(これは#345で再度ご紹介します)。1993年に生産が大きく落ち込んでいるのは、「平成米騒動」の年です。この年は梅雨前線が長期間日本に停滞し、九州地方ではついに梅雨明け宣言の発表がなされなかったという異常な年でした。よってお米の代替品として、麺類の需要が一時的に伸びました。
一時的な米不足のため翌年にはタイなどの東南アジアからお米が緊急輸入されました。しかしタイ米はインディカ米(長粒米)、そして日本の米はジャポニカ米(短粒米)と種類が異なるのでは、不人気でした。中には不法投棄されるケースもあり、いくら飽食の時代といえ、実にもったいない話です。そしてその後、輸入米(赤色の部分)が定期的に輸入されるようになりますが、これはガットウルグアイ・ラウンドで、日本は米の関税化と引換えにMA米(ミニマムアクセス米)の輸入を認めた結果です。ただでさえお米が余っているのにMA米を輸入することにより、益々減反が加速され、また当然自給率も低下することになります。

②大麦
50年前も今も国内需要は200万t程度ですが、内容は大きくことなります。青い部分が国産、緑が輸入を表しているので、グラフをみれば一目瞭然。即ち昔は国産100%であったのが、今ではほとんどが輸入です。で、大麦って何に使用しているのかと言えば、食用はごく僅かで、ほとんどが飼料用と酒類用です。ではどんなお酒かといえば、当然焼酎になります。ここの10年位の傾向をみていると、需要は減少傾向なので、焼酎ブームも一段落したのかも知れません。

③小麦 
私たちが関心のある小麦についていうと、需要はこの50年間で400万tから600万tと約1.5倍になりました。小麦需要は、一部飼料用もありますが(直近では50万t)、ほとんどが食用なので、私たちはそれだけ小麦粉製品を多く食べるようになり、食生活が多様化しているのがわかります。
ただ1960年に153万tあった国産小麦は、2010年には57万tと約1/3にまで落ち込みました。普段私たちは国産小麦という言葉をよく聞くので、もう少し多く生産しているように感じますが、実際は全需要の10%程度ですので、この数字は意外に感じると思います。
国産小麦については、ほとんど全てといっていいほど、皆さん良い印象を持っています。ではなぜ増産が進まないのかといえば、それは農家にとって国産小麦の販売価格が魅力的でないからです。国産小麦については補助金が投入されていますが、それでも充分な価格とはいえず、増産しようというインセンティブにはならないのです。言い換えると輸入小麦の生産コストは、それほど低いのです。一戸当り何千~何万haと耕作しているアメリカ、カナダ、オーストラリアとの違いはそれ程大きく、よって生産コストが違うのです。
ご承知のように現在の日本の食料自給率は40%(カロリーベース)を切っています。これでは心もとないということで、せめて50%にまで引き上げようと、農水省は目標を立てていますが、このためには小麦は180万t程度にまで増やす必要があります。しかし「言うは易く行うは難し」で、国産小麦の増産はなかなか進みません。今以上の補助金(つまり税金)を投入して増産を図るべきなのか、そのあたりをキチンと考える必要があります。