#330 コンビネーターの故障その①

現代の小麦製粉は、小麦の表皮と胚乳部分とをキチンと分けるために、たくさんの機械を使用し、その結果製粉工程はかなり複雑になっています(新着情報#158~#166)。そしてこれらはすべて一連の流れ作業、つまりラインとして生産されるので、どこか1ヶ所でも機械が故障すると、全体がストップしてしまいます。しかし形あるものいつかは壊れるのは仕方なく、問題は壊れるのを定期点検等により未然に防ぐことができるのか、また故障したときは如何に早く復旧できるかがポイントになります。理想は前者ですが、どうしても後者は避けられず、特に中小企業の場合はそうなりがちです。

ところで港にあるサイロから搬入したばかりの小麦には、麦わら、石ころ、小枝、他の穀物などといった夾雑物(きょうざつぶつ)が含まれていて、そのまま製粉してしまうと、これら不純物も小麦粉に混じってしまい、品質が低下します(料理のとき野菜などの食材を水洗いせずにそのまま調理すると、美味しくないのと同じことです)。そこで小麦と夾雑物とをキチンと分別する工程は非常に大事で、この工程を精選工程と言います。そして先日、4月のある金曜日、操業中にコンビネーター(右画像)という精選工程の主要機械が突然故障してしまい、実に困った状況になりました。

調べてみるとラバーブッシュ(右下画像)という機械全体の振動を吸収するパーツが破損したのが原因でした。パーツ自体は高価なものではありませんが、特殊なパーツなので、製造元であるスイスのB社しか製造していません。そこでB社の日本支社に問い合わせたところ、支社には在庫がないので、スイスから直送するしか方法はなく、それには3~4日はかかるだろうとの返事でした。余談ですが、小麦製粉というのはヨーロッパが製粉発祥の地であるので、製粉機械メーカーもヨーロッパに多く、B社はとりわけその中でも業界標準とも言うべき位置づけの会社です。よって日本の製粉会社もほとんど全て、B社のユーザーです。

サイロ更新(#329)前の操業停止というのは、なんとも具合が悪く、こちらで応急処置的な代替パーツが作成できないかとも考えましたが、結局対応不可で、指を加えて純正パーツが届くのを待つしかないなあ、ということになりました。

翌日の土曜日、現在市内の病院にて入院療養中の製粉部長の様子を伺いにいったついでに、この事件を説明したところ、暫く間をおいて、「だいぶ前の話やから、よう覚えとらんけど、ひょっとしたら予備のパーツが倉庫にあったかもわからんなあ」と言いだしました。そこで会社に電話をしたところ、しばらくして「予備のラバーブッシュがありました」との連絡が入りました。で、それから急遽交換作業を開始し、その日は8時過ぎまでかかりましたが、無事交換作業が終わり、なんと月曜日から操業を再開することができました。つまり結局のところ操業が停止したのは土曜日1日だけですみました。

製粉部長曰く、「コンビネーターを設置したときに、このラバーブッシュは滅多に壊れることはないけど、毎日駆動している部分やし、特殊な部品なんで念の為に予備を確保しとったんや」っと。これはあくまで一例で、たとえ入院中で工場にいなくても、工場のことが誰よりもよくわかる、入社50年を超えるこの製粉部長の経験と知見に何度救われたことか。それにしても今回は本当に救われました。