#226 うどん生地⑥・・・手打ちうどんをゆでるとどうなるか?

手打ちうどんを打ちます。団子(生地)を踏んで、延ばして、それを屏風畳みにして切ります。寸分の狂いもなく同じ幅に切ります。それをゆでるとどうなるでしょう?果たして全て同じ太さになるでしょうか?答えは「No!」です。この事実を今から考えてみたいと思います。

前回(#225)、手打ちうどんの生地を延ばした場合、そのグルテン繊維は中心から放射状に延びることを確認しました。ではそれを切ってできたうどんの一本一本のグルテンの方向どうなるのか考えてみましょう。ちなみにグルテンは放射状に延びているので、どちらの方向から屏風畳みにしても条件は同じです。

グルテンの方向性が良くわかるように、図では少々オーバーにうどんを描いてみました。するとグルテンが放射状の方向性をもっているので、どこのうどん1本とっても、そのグルテンの方向性はビミョーに違うことがわかります。そしてその中でも両極端はAとBになります。Aの場合、グルテンの方向性はほぼうどんの向きと同じになり、これは(#223)のAとほぼ同じです。一方Bの場合、グルテンの方向性はうどんの向きと直角になるので、(#223)のBとなります。#223で、グルテンの方向性がうどんの向きと同じときは、うどんは太くなり易く、直角のときはうどんは長くなり易いことを確認しました。

よって手打ちうどんも、全く同じ太さに切っても、画像のAのうどんは、Bのうどんよりも太くなるだとうと予想できます。実際、麺棒で延ばしてそれぞれを20㎝の長さに切ってゆでたところ、その事実を確認できました。またよく見るとAの方がBよりも太いことがわかります。延ばしたうどん生地を屏風畳みにしてカットするときは、同じ長さであっても、ゆでると両端のうどんは中央辺りのうどんよりも長く、逆に中央当りのうどんは両端のうどんよりも太くなります。よってこの事実を実際の手打ちうどんに当てはめると、全く同じ幅に切ったとしても、長いうどん(つまり円盤の直径近辺という意味です)は短いうどん(同様に両端辺りのうどん)よりも、太くなるということです。

またA,B以外の極端なものとしてCとDが挙げられます。Cはグルテン繊維が主に右下から左上に走っているので、うどんはその反対方向、つまり左下から右上方向にかけて膨張しようとします。よって多少形が崩れるかもしれません。そしてDは全体的に太くなろうとする傾向はAと同じですが、違うのは中心辺りにおいてはグルテン繊維が縦も横も同じように形成されている点です。つまり厳密にいうとDのうどんは、真ん中よりも上下端の方が太いということが言えます。

で、結局のところ何が言いたいかというと、手打ちうどんの場合はそのグルテン繊維の性質上、どのうどん1本とってもその形状がビミョーに違うということです。「素人さんがうどんを打つと、長いの、短いの、太いの、細いの色んなうどんができる」とよく言われます。実際打ち始めの頃は皆さんそうですが、しかしどんなに熟達して完璧に同じ幅に切ることができるようになったとしても、ゆでた後のうどんはやっぱり全てビミョーに異なるということです。よってお店ででてきたうどんが、すべてビシッと同じ太さに揃っていて、全然よれていなければ、それはきっと手打ちじゃない、っと考えます。