#070 うどんとそうめんの違い

世間では、太いのがうどん、細いのがそうめんと相場が決まっています。でも、「太い」とか「細い」という尺度は主観的で、人によってかなり幅があるし、また地域格差もあります。例えば、超有名かつ超高級手延うどんである「稲庭うどん」は、讃岐の人がみたら「えぇ~?こんな細いのがうどんなのぉ~」と感じます。また、手延そうめんの中では、唯一の太麺である「半田手延素麺」(徳島県半田町)は、初めての人にとってはなかなかそうめんには見えません。実際、両者を比べると、「稲庭うどん」の方が太いけど、「半田そうめん」の方が厚みがあるので(というか断面は丸いので)、どちらがよりうどんらしいかといえば、結構いい勝負です。

このように、太い、細いの尺度がないと不便なので、乾麺については、一応 JAS (日本農林規格)によって次のような決まりがあります。つまり乾麺では直径が 1.3mm 未満のものがそうめん、 1.3mm 以上 1.7mm 未満がひやむぎ、 1.7mm 以上がうどんということになっています。この分類によると、「ひやむぎは、そうめんよりちょっと太いもの」ということになります。しかし、厳密には、これ以外に「そうめんの断面は丸く、ひやむぎのそれは正方形でなければならない」という意見もあります。実際同じ太さでも、断面の形状によって食感は違ってきます。

ここで「ロール製麺」のところででてきた切刃を思い出してください。切刃の幅が広いとうどん、狭いとそうめんになると言いました。そしてもう少し説明すると、この切刃の溝の幅を表す指標として、「切刃番号」もしくは「番手」というものがあります。これは 3 センチの中に、含まれる溝の数を指します。例えば、 10 番ということは、溝の数が 10 本なので、1本の幅は 30 ㎜÷ 10 = 3 ㎜となり、これは 1.7 ㎜以上なので、うどんとなります。

現在、切刃の種類としては、下表の通り15種類が用意されています。一番細いのは 30 番で、幅が 1 ㎜です。これ以上細くなると、吊るして乾燥させるときに切れてしまうので、「ロール製麺」ではこの 30 番が細さの限界です。同じ乾麺でも、手延そうめんはロール製麺と異なり、元の生地をどんどん引っぱって細くします。これだと、更に細くすることが可能で、匠の技術には素晴らしいものがあります。

切刃番号 溝幅 ( ㎜ ) 用途
4 7.5 ひらめん
5 6
6 5
8 3.8 うどん
10 3
12 2.5
14 2.2
16 2
18 1.7 ひやむぎ
20 1.5
22 1.4
24 1.3
26 1.2 そうめん
28 1.1
30 1

 

一方、うどんより幅の広いものは、「ひらめん」となっていますが、こちらは 4 番の 7.5 ㎜が最高です。「 7.5 ㎜って大したことないじゃないか」と思うかもしれませんが、乾麺はゆでると水分を吸って、どんどん太くなるので、このあたりがおいしく食べることができる太さの限界だろう、ということになっています。ひらめんの中で、私たちに馴染みが深いのは、やっぱり名古屋のきしめんですね。さぬきうどんの乾麺では、 8 番が主流です。

16 番も一応は、うどんの範疇に入りますが、これはひやむぎのすぐ隣になるので、うどんとしては少し物足りないと感じるかもしれません。というのは、うどんは太い方が、コシがあってうどんらしいという意見が圧倒的に多いからです。で、「じゃあ 14 番はどうだ」と思って試してみると、個人的な感想ですけど、「まだうどんのコシ、もっちり感は感じられる」し、何よりもイライラすることなく、「あっという間にゆで上がる利点」があります。

乾麺の需要が落ち込んだ理由は、大きく二つあると思います。一つは、社会が豊かになり、食品が多様化してきたこと。例えば、以前は麺類といえば、うどん、そうめん、そばぐらいしかなかったものが、今では、ラーメン、パスタ、ビーフンがあります。美味しいものがたくさんあると、それぞれ食べないといけないんで、どうしても個々の食品のあたりが悪くなるのは仕方ありません。もう一つは、利便性、簡便性が優先される今日においては、ゆで時間のかかる乾麺はどうしても敬遠されやすいこと。

しかし、純粋に味覚だけで判断すると、乾麺は、依然としてトップクラスに位置します。そして添加物など一切含んでいない健康的な食品であることも魅力です。このように考えると 14 番あたりのうどんは、「旨い、安心、早い」と三拍子揃った食品なので、個人的にはとっても気に入っています。