#019 オーストラリアの小麦事情

昨年の11月、オーストラリアに小麦畑を見に行ってきました。これは、私達中小製粉が加盟している協同組合の45周年記念事業の一環として、企画されたものです。ご存知の方も多いと思いますが、現在うどんなど麺用に使用される小麦粉の原料の多くは、オーストラリアのASWという銘柄の小麦が使用されています。そういうわけで当社のように麺用小麦粉が主体の製粉工場にとっては、「うどんのルーツを求めて」みたいな感じでなかなか意義深い旅でした。

パース市の外観

パース市の外観

もちろん、さぬきにも「さぬきの夢2000」という有名なうどん用小麦があります。この小麦でうどんを作ると甘味が強くて味の濃いおいしいうどんができます。反面、数量的に限りがあること、またある意味「打ち手を選ぶ」小麦でもあるために、現在のところ主流にはなってはいません。長くなるので理由は割愛しますが、品質、価格などを総合的に判断すると「麺用としてはこのASWが最適ではなかろうか」というのが、業界の集約された意見ということになります。

パースの街並み

パースの街並み

ASWの生産地はオーストラリアの南西部で、最寄りの都市はパース(Perth)です(上写真参照)。オーストラリアを形状が似ている四国に例えると、パースは大体高知県宿毛市あたりに位置します(逆にわかりにくい?二つの位置関係は最後のリンクを参照してください)。パースは世界一美しい都市とも、また世界で最も孤立した100万都市とも言われています。後者の理由は、インドネシア・バリ島まで3時間半、シドニーまで4時間、ヨハネスブルグまで11時間の飛行時間で、となりの大都市まで、一番遠いという理由からです。

マイク・アーヴィンさん一家の小麦畑

マイク・アーヴィンさん一家の小麦畑

話は戻って、小麦畑はパースから東北東へ車で1時間を過ぎたあたりから始まります。走るに連れ、だんだんと風景が変わり、家が少なくなり、畑が多くなります。でもそのあたりの畑はまだ本格的なものではなく、都市に住んでいる人たちの家庭菜園程度のものだとの説明があり、「フン、フン」とうなずきながらも、規模が10ha程度だと聞きびっくり。家庭菜園はいいけど、そんなの一人で食べ切れるわけないじゃん。

小麦の収穫風景

小麦の収穫風景

さてパースから東北東へ約140kmのところあるのはマーク・アーウィンさんの小麦畑です(上写真参照)。2005年は雨の影響で例年に比べ約3週間遅れの刈り取りでした。所有農地は4200haですが、その年の小麦の作付面積は1700haでした。これは、連作障害を避けるために、同じ場所は続けて耕作しないからです。マメ科の植物を植えると根粒細菌が窒素を生産して、土地が肥えて翌年は作物がよく生育します。つまり、一つの農地を「小麦 ⇒ 休耕 ⇒ 豆」と3年を1サイクルで回転させるのがいいみたいです。

クイナナの港。ここから日本の港に向かって小麦が輸出されます。

クイナナの港。ここから日本の港に向かって小麦が輸出されます。

2005年はオーストラリア全体で2500万tの小麦の収穫が見込まれ、そのうち日本にはASWを中心として100万t以上が輸入されます。日本の小麦生産量は80万t程度なので、オーストラリアはざっと日本の30倍ということになります。収穫された小麦は、まず地元の集荷場に集められますが、そのとき必ず品質チェックされます。そしてこの小麦はパースの近くのクイナナという港(写真参照) から輸出されます。ここから小麦を積んだ船が、さぬきの港に向かって出帆すると思うと感慨深いものがあります。日本だと、でっかい岸壁をつくって、大きな貨物船を横付けするところですが、ここでは遠くまでパイプを引っぱって、沖で積み込むようにしています。こうすることで、自然の砂浜がそのまま残っていたのは印象的でした。

国産小麦粉を希望される理由に「安全・安心」を挙げる方がいます。私も同感です。一方、オーストラリアの小麦は、地平線が見える程の広大な畑で、燦燦と太陽の光を浴び、スクスク育ち、そしてこのような青い海の港から輸出されています。また、農業はオーストラリアの輸出の大きな柱なので、さまざまなところでその安全性もチェックされています。このように見ると、オーストラリアの小麦が、少なくとも日本の小麦より安全でない理由は見当たりませんでした。

パースはこちら ⇒ https://www.perthtourist.com/tours.asp
宿毛市はこちら ⇒ https://ww8.tiki.ne.jp/~akano/map/tizu-0.html