#010 その後の「さぬきの夢2000」・・・Part1

2004年8月24、26、31の3日間、香川県下の3会場にて香川県主催の「さぬきの夢2000」製麺講習会が催されました。これは昨年に引き続き2回目の試みで、品質においては優れているものの、製麺性、作業性に難があるとの理由でイマイチうどん屋さんに浸透していない「さぬきの夢2000」をもっと香川県下のうどん屋さんに使ってもらい、地産地消を振興するのが目的です。そこで講習会での内容も含め、「さぬきの夢2000」の現状を再度、以下の項目別に簡単に整理してみました。

【味・風味・食感】
「さぬきの夢2000」に含まれるでんぷんは低アミロースであるため、うどんにした場合、独特のもちもち感、粘りがあり大変好感がもてます。また味においては更に素晴しく、社内で何度も食味試験をしましたが、最大の特長はうどんの味の濃さ、つまり小麦の風味が従来品と比べて強く感じられることです。この味については、「昔のうどんの味がする」とか「懐かしい香りがする」などの声も聞きますが、この点について少し補足しておきたいと思います。

昔と今では製粉技術が違うので当然できる小麦粉も異なります。簡単に言うと、昔は石臼に代表されるように、小麦を石臼で挽いたものをそのまま篩にかけて小麦粉となります。いわゆる「一発勝負」の製粉方法で、これだとどうしても外皮の破片が小麦粉に混入してしまいます。そしてこれが、「うどんが香ばしい」とか「風味がある」といった評価につながります。でも反面、今のうどんに比べると当然、色がくすんだり、のど越しが良くないといった欠点もあったはずです。

それに対して現在の製粉方法は「段階式製粉」とよばれ、まず小麦を粗砕きします。これは外皮の混入をできる限り防ぐのが目的で、胚乳部と外皮とを大きく分離します。次にこの胚乳部を更にじわりじわりと段階的に小さくしながら、「砕き→篩い」を繰り返し最終的に小麦粉にします。このようにしてできた小麦粉は外皮が入っていないので、うどんにするとなめらかなのど越しで、色も鮮やかです。一言でいうと以前よりずっと上品なうどんですが、風味に欠けるといった声も聞かれます。

つまり昔と今ではうどんも異なって当然なのです。にもかかわらず、「さぬきの夢2000」うどんについて、「うどんの味」が強調されるのは、「さぬきの夢2000」に含まれるでんぷんの性質に原因があるはずです。言い換えると、胚乳部の70%以上を占めるでんぷん質自体の「味」が従来の小麦に比べて強いのです。このためになめらかで、のど越しもよく、そして色艶がいいにもかかわらず、うどんの味が「濃く」感じるのです。このように考えると「さぬきの夢2000」うどんはこれまでにないおいしさなのかも知れません。

【作業性・製麺性】
すばり「味」はいいけれど、反面作業性に難があることが、まだうどん屋さんに充分浸透していない主な理由です。つまり、宵練りすると生地がだれやすく、逆に熟成時間が短いと当然うどんに旨みはでません。また、少しでも加水が多いと生地がべとべとになるし、少ないと塊にならないなど、作業条件における許容範囲の狭いことが、うどんづくりを難しくしています。更に、切れやすいとか、ゆであげた後のゆで伸びが早いことも問題点として挙げられています。簡単に言うと、「さぬきの夢2000」はドンピシャと当たればどこまでも飛んでいくけれども、そのスイートスポットの狭さが問題なのです。

【「さぬきの夢2000」の供給量】
平成15年度産の「さぬきの夢2000」小麦は約3000トン収穫され、平成16年度産は4800トンを予定していましたが、播種時期の長雨の影響で、結果的には前年並みの約3000トンに留まりました。小麦粉の歩留りを60%として、これをうどん玉に換算するとなんと2000万玉以上にもなります。でも「わあ、すごい」と思っても、これは現在さぬきで製造されているうどんの3~5%程度にしか過ぎません。今後増産が予定されてはいますが、耕作面積に限りがあるので、使用比率において5%を超えることは多分ありません。香川県としてはこの限られた資源を地産地消、つまり香川県で採れた小麦を、県内で製粉してうどんに加工し、そして県内のうどん店で皆さんに食べてもらいたいと考えています。