#245 ほどほど健康術・・・小麦の全粒粉、栄養素の宝庫

日経新聞に「ほどほど健康術」というタイトルのコラムがあります。ここでは新潟大学医学部の岡田正彦先生が健康管理についてのポイントをわかりやすく説明してくれます。先日2010年6月27日のコラムでは、私たち小麦製粉に携わる者にとって、興味深い記事が掲載されていましたので、ここにご紹介いたします。

【小麦の全粒粉、栄養素の宝庫】

ご飯やパンといった主食を、栄養素として意識したことがあるだろうか。

欧米ではパン、シリアル、パスタなど、主食の効能に関する大規模調査が盛んで、驚きの効能が続々と見つかっている。どれも小麦やライ麦を丸ごと製粉した「全粒粉」で作った主食のことだ。ご飯でいえば玄米に当たる。

どの調査にも共通しているのは、全粒粉で作ったパン、シリアル、パスタなどを毎日食べている人に、心臓病が20~40%少ないという結果になっていることだ。がんも30~70%少ない。

ただし、食品の研究はなかなか難しい。「食べている人」と「食べていない人」を公平に分けて長い年月、追跡するのが大変なためだ。これらの数字は多少割り引いておいたほうがいいかもしれない。

全粒粉には抗酸化物、ビタミン、食物繊維、カルシウム、鉄分などが豊富に含まれる。どの成分がいいのかは分かっていない。精白した小麦には効果が認められないことから、製粉の過程で捨てられる「胚芽(はいが)」や「ふすま」に有効成分が含まれているのは間違いない。

全粒粉100%では味に難点があり、パンもうまく焼けないらしい。欧米では精白小麦と全粒粉とを適当に混ぜ合わせたものが普及している。

では、どのくらい食べればいいのか。米国には9万人の医師を対象に全粒粉パンやシリアルの摂取量と寿命との関係を調べた研究がある。「ほとんど食べない」から「毎日2個または2カップ以上食べる」までの7段階で食習慣を答えてもらった。全粒粉を25%以上含んでいるものと、それ以下に分けてデータをまとめた。

6年後、全粒粉を含んだパンやシリアルを毎日、1個(または1カップ)以上食べていた人たちは、死亡率が24%ほど低いことが分かった。

全粒粉は100%でなくとも効果があるようだ。日本で好まれている「真っ白な食パン」は精白粉で作ったもので、これらの効能は期待できない。

ご飯はどうだろうか。玄米の効能を科学的に検証したデータがない。白米にほどほどの玄米を混ぜるくらいが無難だろう。ご飯など和の食材については、これから日本人が大規模調査をがんばってやるしかない。

 

つまり小麦ふすま(小麦の表皮部分)が如何に現代の私たちの食生活にとって理想的な食材であるかを、実に明快にそして客観的に説明してくれています。ただ小麦ふすまをたくさん含んでいる小麦全粒粉(小麦を丸ごと挽き込んだ粉)の難点は食味が普通の小麦粉より劣ることで、これが食品として定着するための唯一のハードルです。よって100%は無理でも部分的に使用して、毎日摂取するのがベストの方法のようです。

岡田先生は著書も多く、早速いくつか読んでみましたが、どれも健康についてポイントを単純明快に説明してくれています。そして特に印象的だったのは、巷には「○○が身体に良い!」とか「△△で痩せる!」といったサプリメント類や健康器具が沢山あるけれど、それらはほとんど(というかほぼ100%)効果はないと結論づけています。そしてその根拠はまた明快です。

例えば〇〇が効果があるかどうかを調べるには、大人数を2つの大きなグループに分け、一つのグループには〇〇を摂取してもらい、もう一つのグループは何もせず、その後長期間追跡調査した後、統計的に有意な差があるかどうかをみるのが唯一の方法だと言っています。上記の例では、小麦全粒粉を摂取していると「死亡率が24%低い」という事実は、9万人の医師を対象に6年間の追跡調査をした結果ですから非常に説得力がありそして重みがあります。

そしてちょっと残念ですが同様に得られた結果として、「ダイエットに王道なし」があります。つまり巷で「楽して痩せる!」みたいな方法がいくつも宣伝されていますが、それらはほとんど効果がなく、唯一の方法は食事療法と適度な運動である、という極めて単純なものでした。