#222 うどん生地②・・・切る方向が違うと、ゆでたときどう変化するか?

同じ長方形の生地でも、鍔(つば)付ロールと鍔なしロールでは、延ばしたときの形が異なることを確認しました(新着情報#221)。一般に乾麺の製造工程で使用するのは、鍔付ロールなので、うどん生地は幅を変えることなく、薄くなる度に、後方にどんどん延びていきます。そして生地が適性な厚さになったところで、切刃と呼ばれる装置でカットされ、うどんもしくはそうめんになります。その後は竿に吊され乾燥室へと運ばれ、乾燥されます(新着情報#69)。

ここで注意してほしいのは、生地がカットされる方向です。乾麺の場合は滝から水が流れ落ちるように、切刃によってカットされます。つまり生地がカットされる方向は圧延方向と平行になります。でもカットする方向は、それだけではありません。圧延方向と直角方向にカットすることも可能です。つまり乾麺製造の場合は、図のAにあたりますが、Bのようにカットすることも可能です。乾麺製造において圧延方向にカットする理由は、単にその方が都合が良いというだけに過ぎません。

ではここで問題です。圧延方向に平行にカットした麺線Aと、直角にカットした麺線Bがあります。このとき麺線AとBは全く同じです。厚さも同じです。見ただけでは全く区別がつきません。ではどうすれば両者が区別できるか考えてみてください。

・・・その答は両者をゆでてみることです。AとBは同じ長さにカットされていても、ゆでるとBはAより長くなります。そして逆にAはBより太くなります。では、この事実を今から確認します。

1本だけではうまく計測できないので、5本まとめてやります。どちらも長さを20㎝に揃えます。そして手動では均一にカットするのが難しいので、電動カッターを使用したところ、一本の太さは3.9mmになりました。これを別々の鍋で13~15分ゆでて、水洗いし計測したところAは27㎝、Bはなんと33㎝になりました(画像参照)。つまり圧延方法と直角にカットした方が、ずっと長くなります。このゆでた結果をまとめたのが次の表です。

ゆで後の長さ ①長さの伸長率 ゆで後の太さ ②太さの伸長率 ①×②
A(圧延方向と平行) 27㎝ 135% 5.5㎜ 141% 1.90倍
B(圧延方向と直角) 33㎝ 165% 4.6㎜ 118% 1.95倍

 

 

二つの鍋でゆで時間が多少前後したので、伸長率には若干ぶれがあるやもしれませんが、大体の傾向はつかめると思います。つまりうどんはゆでると、生地中のでんぷん粒が水分吸収し、その結果縦にも横にも膨れます。ただどちらも同じ割合で膨れるかというとそうではなく、圧延方向と平行にカットしたうどんは、長くはなるけどそれ以上に太くなる傾向を示し、逆に圧延方向と直角にカットしたうどんは、太くなるよりももっと長くなろうとします。1本だけだとどちらが太いのか判断しかねますが、5本並べると上の方が太いことが良くわかります。

そして更に興味深い事実は、どちらの場合も①×②=「長さの伸長率×太さの伸長率」、つまり膨張した面積そのものはどちらも2倍弱と、ほぼ同程度になることです。尚、ゆでたうどんは、もう少しきれいに並べようと努力しましたが、だんだんとうどんがくっつき始め、これが精一杯でした。どうかご容赦ください。