#210 「さぬきの夢2000」の後継品種は香育21号に決定

2009年10月30日にプロジェクト検討会があり、「さぬきの夢2000」の後継品種に、香育21号が決まりました。今後香育21号は、品種登録をおこない、正式に2代目「さぬきの夢2000」となります。そして今後順次作付面積を増やし、2013年(平成25年)には前面切り替えとなります。

「さぬきの夢2000」はそのうどんの旨みには定評がありましたが、グルテンの少なさに起因する製麺適性の低さが唯一の課題になっていました。じっくりと丁寧に手順を守って製麺すれば、どこにも負けない旨いうどんができるのですが、反面大量生産にはなかなか向かないので敬遠されてきたのも事実です。そこでこの問題点をクリアーし、後継品種候補として浮上してきたのが、香育20号と香育21号です。なぜ2つが候補として上がってきたかというと、その開発元である香川県農業試験場では、有望系統が2種できたけれど、どちらも甲乙付けがたく、農業試験場では決めかねるので、「プロジェクト委員会でみんなで話し合って決めてくれ」ということになったのです。

これまで何度もお伝えしたように、香育20号と21号はどちらもよい小麦ですが、その方向性つまり性格がまるっきり異なります。前者は従来の国産小麦らしくなく、どちらかといえばオーストラリアの小麦とよく似ています。一方、後者は従来の「さぬきの夢2000」と共通点が多くあります。つまり簡単にいえば「さぬきの夢2000Ver.2」といったところでしょうか。っで、このどっちを後継品種に決定するかを巡り、次のようなかなり大がかりな調査がおこなわれました。

①栽培適性調査 
いくらおいしいうどんができても、肝心の農家の方にとって栽培適性が良くないと、栽培してもらえません。

②製粉適性調査
試験室で少しだけ製粉するのと、実際の製粉工場で大規模製粉するのでは、事情が異なります。そこで製粉工場で製粉してみました。

③製麺適性調査
実際の製麺工場で、乾麺および半生麺を製造して比較しました。

④実需者アンケート
打ち比べを希望するうどん店47店舗のご主人に実際に打ち比べていただきました。

⑤1000人試食アンケート
ずばり1000人試食アンケート大会を実施して、その結果をまとめました。当日は結局1093名が試食されました。

⑥半生麺試食アンケート 
上記のアンケート大会にこられた方に、半生うどんをプレゼントし、そのアンケート結果です。

⑦うどん店試食アンケート
現在の「さぬきの夢2000」を使用している「こだわり店」でおこなった763人による試食アンケートです。

後継品種が決定し満面の笑みを浮かべるプロジェクト検討会・北川博敏座長

後継品種が決定し満面の笑みを浮かべるプロジェクト検討会・北川博敏座長

これらの結果をかいつまんで説明すると:なんと驚くべき事に①~⑦すべてにおいて香育21号が後継品種として適しているという結果がでました。特に⑤1093名の試食試験の結果は非常に大きな意味があると思います。また④においては、実際に試したうどん店のご主人のうち、66.7%、つまり3人に2人が「香育21号が後継品種に決まったら、使用したい」という心強い意見をいただき、製粉工場としては頼もしい限りです。また②の製粉適性においては、香育20号の方が製粉はし易いけれど、粘っこくて製粉しづらい香育21号の方が、国産小麦らしいということで、敢えて香育21号が後継品種に適しているという結果になりました。まぁ、「あばたもえくぼ」みたいな感じです。同じことはうどんの色についても言えます。本当は淡黄色、つまり淡い黄色味を帯びたうどんの方が、きれいで食欲をそそると考えますが、敢えてすこし白くてくすんだように見える香育21号が後継新種に相応しいということになりました。

最後にひとつだけ補足いたします。もし純粋に香育20号と香育21号だけを比較するなら、結果はこんなにきれいに分かれなかったかも知れません。つまり2つの小麦の性格はかなり違うけど、うどんそのものはどちらもそれぞれに美味しいのです(だから農業試験場でも決められなかったのです)。現在、さぬきうどんに使用されている小麦粉の90%以上は、ASW(オーストラリア産)です。乱暴な分類ですが、このASWの性質を「A」とするなら、香育20号は「A´」、香育21号は「B」と表現できます。つまりASWと香育20号は少し似ているところがあるのです。だから「市場が多様性を求める」という意識が、働いたのが真相かも知れません。