#165 今時の小麦製粉⑧・・・小麦粉の完成

で結局、これまでの説明でおわかりいただけたかと期待していますが、最初1Bロールで割られた小麦は、シフター、ピュリファイアー、別のロール機などを行ったり来たりしながら、最終的には40~50種類の上がり粉に採り分けられます。つまり現代の製粉方法では、一粒の小麦は少なくとも40種類の上がり粉に採り分けられます。上がり粉の数に幅があるのは、それぞれの工場によって製粉の工程が少しずつ違うからです。

この後は、これら上がり粉のブレンド具合によって、様々に違う小麦粉を作ることができます。例えば3種類の上がり粉A、B、Cがあったら、組合せを変えることによって、A×B×C, A×B, B×C, C×A, A, B, Cの6種類の小麦粉をつくることができます。では40種類あれば、単純にその組合せだけを数え上げると、なんと1兆種類以上になります。またシフターの網の目、ロールの締め具合などにもより、ストックの流れは違ってくるので、このように考えると、一応理屈としてはほぼ無限に多くの種類の小麦粉が作れることになります。

お米なら精米することによって、表面の米糠が削りとられ白米に変わります。搗き具合によって差はあるものの、基本的にはどこで精米しようが、搗いたお米は同じになります。しかし小麦製粉については、精選、調質、挽砕、純化、篩などの工程があり、これらの加減によってもできる小麦粉は異なります。だから同じ小麦を製粉しても、それぞれの工場の製粉の仕方によって、違う小麦粉ができあがり、それが各製粉工場の特徴になります。

さて話は戻りますが、実際の上がり粉から商品を作る場合は、でたらめに混ぜ合わせるわけではありません。普通はこれらをきれいな順番(灰分の少ない順)に並べ、上位グループを一等粉、その次のグループを二等粉といった具合に、上がり粉をグループ別にして小麦粉を配合していきます。灰分は少ないほど小麦粉の色調が鮮やかで、多くなるにつれてだんだんとくすんできます。稀に例外がありますが、普通は灰分が少ないほど、小麦粉の色は白くて鮮やかだと思って間違いありません。

一等粉グループに入れるメンバーを多くすれば、採れる量(歩留まり)は多くなりますが、欲張りすぎると全体の質が落ちます。逆に厳選し過ぎると、色鮮やかな素晴らしい小麦粉ができますが、今度は歩留まりが少なくなるので、このあたりはバランスが必要です。一般に特等粉といわれるものは、上位グループの歩留まりが40~45%になるように、また一等粉は60~65%になるようにグループ分けします。また一等粉だけを良くすればいいというものでもありません。同時に発生する二等粉、三等粉などの用途も考慮しながら、全体のバランスが必要になってきます。

小麦粉の価格で言えば、特等粉は一等粉よりも高くなります。そしてうどんにしたときも、特等粉の方が色が鮮やかで艶もあり、のど越しもなめらかです。しかし肝心の味については、評価は微妙に分かれます。特等粉の方が良いという意見もあれば、一等粉の方が小麦の風味が感じられて旨いと感じる方もいます。つまり味については、小麦の中心部分だけよりも、少し周辺部分の胚乳が混ざった方が美味しいと感じる方もいて、評価はそう簡単ではありません。