#150 (Q)硬くて食べられないようなうどんを作るには?

神奈川のY.T.さんから次のようなメールをいただきました。

(Q)先日、中華用小麦粉を使用し、標準的な加水(塩度12%の48%加水)でうどんを打ちました。「延びんうどんやなぁ」と思いつつ、実は“がっちんがっちん”を期待していたのですけど“がちがち”になりませんでした。私の好みは“びよよ~ん、くにゅくにゅ”ですが、老人子供が食べられないほど“がっちんがっちん”を打ってみたい今日この頃です。どうやったら、「硬うて食べられん」ようなうどんが打てるんでしょうか?

 

(A)そもそも「食べられんうどん」ができたら本も子もありませんが、ポイントとしてはできるだけ歯応えがあり、コシのある、そしてしっかりしたうどん(どれも同じか)の、打ち方だと思います。実は新着情報#149で、塩水濃度を変えて試した理由のひとつは、「塩度を高くすれば、それだけ硬いうどんができるかどうか」を確認することでした。

しかし結果としては、食塩を多くしてもうどんは硬くはなりませんでした。生地は延びにくくなり、うどんも粘弾性が増し、コシというか噛んだときのはね返りは大きくなるけど、うどんそのものはあまり硬くなりません。逆に極端に食塩を減らしたときは、生地が締まってうどんは硬くなるが、これは蒲鉾板や羊羹のような「ただ硬いだけ」で求めている硬さとは少し違います

そこで今回は、塩水濃度は標準的な設定にしておき、加水率の大小がどんな影響を及ぼすのか試してみました。具体的には、真夏としては標準的な13%濃度の食塩水(水87%:食塩13%の割合)を用い次の2つを試しました:

作業条件 
(A)加水率46%・・・真夏としては、標準的な設定。
(B)加水率42%・・・手打ちとしては、この時期では、この加水率がほぼ下限かと考えます。これ以下になると、なかなか手作業では一つの生地にまとまりません。

両者とも生地の状態で、冷蔵庫の野菜室に一晩保管し、常温で充分に戻したあと、延ばしてゆでました。(A)は普通に延びましたが、(B)は加水率が低いので周辺部が毛羽立ち、また反り返りが見られました。また表面がざらついたり、少々ひび割れもありますが、加水率の低さ故、これは仕方ないことです。ただ(B)は生地が硬いので、延ばしにくいだろうという当初の予想に反し、結構簡単にに延びました。塩水濃度が高いと生地が柔らかくてもなかなか延びませんでしたが、それとは対称的でした。
見た目は大してかわらんですね!

食味試験 
(A)は普段食べなれているうどんで、標準的にうまい。それに対し、(B)は歯応えがあり、そして旨い。単に硬いだけではなく、小麦の風味も充分だし、小さいとき近所のうどん屋さんで食べた味によく似ています。一般には「多加水」といって充分に水を使用する方が、おいしいうどんができると言われています。これは事実ですが、加水率はある程度までなら、低くしても充分においしいうどんができます。というか、こちらの方が、コシがあり、「うどんの味が濃くて旨い」と感じる人もいます。

乾麺のうどんは、保存食であるとか、また専門店のうどんに比べてランクが下位に位置づけされることもありますが、そうとは限りません。乾麺には乾麺独自のおいしさがあります。それどころか「乾麺のうどんの方が、小麦の風味が強くて好きだ」と感じる方もいます。そして、今回標準よりも低加水で作ったうどんも、この小麦の風味を強く感じました。思うにどちらも加水が少ないゆえ、それだけ小麦粉の密度が大きくなり、結果として風味が増したのかな、とも思います。興味ある方は是非、お試しください。

まとめ 
①加水率を低くすると、硬くてコシのあるうどんができる。
②ただし、標準よりも水が少ないので、水回しは丁寧にする必要があるし、予備熟成(そぼろ熟成)もした方がいいし、また熟成時間も余分にとった方がよい。

③低加水でも丁寧につくれば、うまくて、コシのある、小麦風味たっぷりのうどんができる