#120 製粉後の小麦粉の変化①・・・グルテン

新着情報#118では、「保存は紙袋よりもポリ袋が良いでしょう」と報告しました。ここでは、「製粉後の小麦粉は、どう変化するのか?」、少し調査してみました。その結果、多少参考になりそうな資料が見つかったのでここに紹介します。内容がちょっと硬いですけど、引用しながら説明すると、どこが引用部分かわからなくなるので、とりあえず引用部分だけを先に紹介します。「である」調は、本意ではありませんが、引用部分ということでご了承ください。

製粉後の小麦粉の熟成について①
小麦粉から採れる湿麩、いわゆるグルテンの性質は、小麦粉の熟成によって変化する。つまり小麦粉が古くなるにつれ、そのグルテンは伸展性(extensibility)がなくなり、弾性(elasticity)が増加する。しかし最後には、ざらざらして伸展性、弾性共になくなり簡単にちぎれるようになる。コズミン(Kozmin,1936)は、この小麦粉の熟成によるグルテンの性質の変化は、遊離不飽和脂肪酸の増加によるものだと指摘した。実際、古くなった小麦粉でも、この脂肪酸を取り除いてやると、そのグルテンは元のようになる。また逆に新しい小麦粉でも、古くなった小麦粉から抽出した脂肪酸、もしくはオレイン酸を加えてやると、そのグルテンは古い小麦粉のそれと似たような性質を示すようになる。一方、飽和脂肪酸ではこのような効果は見られない。このグルテンに対する遊離不飽和脂肪酸の効果は、他の研究者たち(Sullivan,1936; Sinclair,1937; Bartn-Wright, 1938; Sullivan,1940)によっても確認されている。

「穀物とその製品の保存について(D.B.ザウアー編)」より

 

では、上記と重複する部分もありますが、少し補足します。小麦粉の生地を自由に成形できるのは、グルテンの粘弾性によるお陰だとこれまで繰り返し説明しました。でもこのグルテンの性質である粘性と弾性は、ずっと維持できるものではなく、時間と共に劣化します。コズミンさんは、小麦粉中の遊離不飽和脂肪酸が増えることによって、この劣化が進行することを見つけました。不飽和脂肪酸が何であるかは今は置いといて(説明できる立場にありません)、とにかく小麦粉が空気に触れることによって、この不飽和脂肪酸なるものが増えると思ってください。で、これらを簡単にすると次のようになります:

「小麦粉が空気に触れる」

「遊離不飽和脂肪酸が増加」

「グルテンが劣化」

「うどんが切れやすくなる」

つまり食味はさて置き、少なくともうどんの食感については、挽いた直後の小麦粉を使えば、グルテンの粘弾性が一番強く、艶があってぷりぷりしていることになります。うどんが切れるようになるまでには、グルテンがかなり劣化する必要がありますが、グルテンの僅かな劣化を意識されるのは、手延べそうめん製造者です。というのは、手延べそうめんは、太い生地をどんどん引っ張り続け、最終的に手延べそうめんの細さにまで加工します。よって伸展性や弾性が充分でないと、途中で「ぼとっ」と切れて仕事になりません。つまり新しい小麦粉程、加工適性が良いことになります。実際、手延べそうめん製造者は経験則として、新しい小麦粉が良いことを知っているので、いつも「挽きだちの粉」を使用します。ということで、いつも同じ結論ですけど、少なくとも麺用は、新しい程いいんじゃないかと。