#092 製造方法の違いによるうどんの種類

うどんの種類といっても、「釜揚げうどん」とか「きつねうどん」といったうどんのメニューではありません。また、「讃岐うどん」とか「武蔵野うどん」とか「稲庭うどん」とか「伊勢うどん」といったご当地うどんでもありません。ここでは、巷に流通しているうどんについて、その製造方法の違いについて、どんな種類があるのか整理してみたいと思います。というのは、昔は精々乾麺、もしくはうどん屋の店頭での玉売りしかなかったものが、現在は包装技術、保存技術が発達したお陰で、色々な形態のうどんができるようになったからです。

まず、大まかな分類として、「ゆでたもの」と「ゆでてないもの」があります。では、まず「ゆでたうどん」から。これは大まかに3種類あります。

(1)チルド麺
袋に入って、スーパーの冷蔵陳列ケース(いわゆる冷陳ケース)に並んで売られているゆでうどんを「チルド麺」といいます。湯煎するだけで簡単に食べられるので、うどんといえばこれを連想する人がほとんどです。ただ、ゆであげ後、時間が経過しているので、消費者の中には「コシがちょっと弱い」と感じる人や、賞味期限が数日程度と短いのが欠点かな。
(2) 冷凍うどん
冷凍うどんが開発されて約30年。冷凍庫から取り出し、湯煎するだけで、ゆでたて直後の食感が楽しめるとあって、これまでほぼ右肩上がりで成長を続けてきました。かつてのように二桁増の伸びはありませんが、それでも成熟しきった食品業界の中では、現在でも数少ない成長分野です。冷凍うどんは釜揚げ直後のうどんを急速冷凍しているので、ゆでたて直後の食感をいつでも楽しめるのが最大の特徴です

(3)LL(Long Life)めん
ゆでたうどんを加熱殺菌して、完全密閉してあるので、常温で数ヶ月保存できるというのが最大のウリで、その名前もLL麺となっています。ただ、添加物を一部使用したり、加熱処理をしたりしているために、味の麺ではゆであげ直後のうどんに一歩譲るのはやむを得ません。

次は、ゆでてないうどん:

(4)乾麺
うどん生地を延ばして切ったものを、そのまま乾燥して水分を14%以下までに落とした「乾燥うどん」です。水分を14%以下にすると、カビの発生を抑制でき、常温での長期保存が可能になります。日本の伝統食品で、添加物不要、長期間保存可能、また味も良好と三拍子そろっているけど、ゆで時間が長いのがウイークポイントです。「できるだけ手間暇かけずに、食べられるもの」が全盛の昨今ですが、なんとかがんばってほしい。

(5)半生うどん
延ばして切ったうどんを、少し乾燥させ、半乾燥の状態にしたものを、「半生うどん」といいます。「水分は○○%」といった明確な決まりはありませんが、22~23%のものがベストのような気がします(独断)。それ以下だと折れやすくなり、なんとなく乾麺に近くなって、半生うどんの特徴がでません。またそれ以上だと、麺がくっつきやすいとか、品質の劣化が早くなるなどの問題が起きます。賞味期限は、通常2~3ヶ月のものが多いようです。半生うどんなるジャンルのうどんは、エージレスの発明と包装技術の革新により商品化が可能となりました。さぬきでは、1988年(S63)の架橋博あたりから、各社こぞって生産するようになったようです。

(6)生うどん
これは、ゆでる前の状態のうどんを指します。家庭で手打ちうどんをつくる場合は、小麦粉に対し重量比で50%程度の塩水を加えます。すると小麦粉には14%の水分が予め含まれているので、できあがったうどんの水分は、38%程度になります。一方、機械製麺では、50%も塩水を加えると、機械にくっついて作業性が落ちるので、これよりはかなり少なめに設定します。半生うどんと同様、包装技術の進歩、また添加物の開発などにより、常温でも長期間保存可能な「生うどん」も商品化されています。

と、まあ今では、一口にうどんといっても、ざっとこれだけあります。実はここでは紹介しませんでしたが、他にもカップ麺のうどんがありますが、これは製造方法が油であげるラーメンの範疇になるので、ここではとりあげませんでした。最後に個人的なことですが、「ゆでうどん」と「生うどん」がごっちゃになってる人をときどき見かけて、悩みます。紛らわしいので、ゆでたうどんのことを生うどんと言ってはいけません。必ずゆでうどんと言うようにしましょう。