2012年1月のお知らせ

新しい年の訪れ。近くの神社の境内を散歩。ヒンヤリとした空気の中で、心も新たになります。

年末・年始を通じて、ご無沙汰している方たちから声の便りが届きました。「当たり前だと思っていた日常生活が、いちばん幸せな生活だと気づきました」(私も、同じ想いです)。

日本文学研究者であるドナルド・キーンさんは、1940年、ニューヨークの本屋で偶然、英訳された「源氏物語」に出会いました。物語のページをめくるにつれて、1000年以上前の日本の王朝貴族の美の世界は、キーンさんの心を魅了しました。どんな魅力でしょうか!?「日本語には、人の想像力に任せる部分がある」と言われます。例えば、「満月の月」よりも「三日月」のほうが美しい。三日月の夜には、明日はこうなるだろう、という想像の楽しみを残します。

芭蕉の俳句、「古池や 蛙飛び込む 水の音」は以下のように説明されています。「古池」は永遠に流れる時を意味し、「蛙飛び込む」が瞬間を意味します。つまり、「永遠」と「瞬間」という両極端の世界が、互いに向き合った「つかの間の時間」を表現しています。幾何学的に見て「古池」が横、「蛙」が縦、その瞬間に生じる水の音・・。すべて語り尽くさない故に、想像する楽しみが残っています(キーンさんの解釈を読み、17語の短い俳句の中に、深い世界があることに、大変驚きました)。

日米両国が太平洋戦争に突入後、キーンさんは沖縄・アッツ島の戦地に赴きました。日本語を学んでいたために、捕虜となった日本兵の尋問、押収した兵士の日記の翻訳が仕事でした。死が近いことを意識した兵士の日記には、自らを戦意に奮い立たせる言葉はなく、遠い故郷を懐かしむ兵士の心がつづられていました。源氏物語に描かれた独特の美意識を持つ日本人、軍国主義に走る好戦的な日本人、戦いに苦悩する人間としての日本人。キーンさんは日本人の内面をもっと知りたいと、日本文学の世界に傾倒します。

キーンさんが最も共感した作家の一人はプロレタリア作家の「高見順」でした。高見順の日記には東京大空襲直後の日本人の姿が描かれています。高見は中国の青島から戻ってきた時、上野駅で整然と並んで列車を待つ日本人がみな落ち着いており、大騒ぎしていない様子を記しています。この描写が、キーンさんの心に感銘を与えました。お寺を訪ねた時、急に雨が降り出しました。見知らぬ方が傘を貸してくれました。キーンさんは「返せないかもしれない」と言うと、「かまいませんよ。どうぞ、使ってください」と。このような何気ない会話が忘れられないそうです。

18歳のとき源氏物語に出会い、89歳になられたキーンさんは2011年9月1日、「日本国籍を取得し、日本に永住する」ために、成田空港に到着しました。飛行機の中から、「日本の美しい畑」が見えたそうです。

1月のお休みは 1~4日(年始のお休み)、9日(成人の日)、28日(土曜日)
   それと日曜日です。

夜空を見上げると、赤色と黄色のライトを点滅しながら、ゆっくりと進む飛行機を見つけました。
2012年、皆さまとって、ご健康で穏やかな時間にあふれた毎日でありますように・・。

おからだ 大切になさって下さい。

木下製粉株式会社  平成24年1月1日