#954 最近の音楽事情①・・・サヌカイト

GWが終わると、うどん県では小麦の収穫を待つばかりとなります。既に麦秋を迎え、小麦は色づきはじめています。そこで気がかりなのは、これからの天候です。昨年は、多雨により予定の60%程度しか収穫できず、今年はなんとしても平年作をと願うばかりです。いよいよ収穫までラストワンマイルとなり、毎日ハラハラ・ドキドキしながら天気予報を見つめています。さてイラスト担当者による新着情報をお届けします。
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マリンバという楽器をご存知ですか?マリンバは木琴とよく似た木の音板をたたいて音を出す打楽器ですが、音域や音色に違いがあります。木琴は音域が高く、明るく鋭い音が特徴で、オーケストラや吹奏楽でよく使われます。一方、マリンバは音域が広く、低音も豊かで、柔らかく温かい音色を持ち、ソロ演奏やアンサンブルによく用いられます。音板や共鳴管の大きさもマリンバの方が大きく、全体に重厚な構造です。

麦秋@2025.05.16

私の高校時代の友人Cは、高校から大学院までマリンバを専門に学びました。卒業後は地元香川県に戻り、学生相手にマリンバの指導を行ったりまた自身も演奏家として時々ステージに立ったりするなどして音楽活動を続けています。そんなCにとあるきっかけで「サヌカイト」を演奏しませんかというお話が飛び込んできました。

ちなみにサヌカイトというのは、香川県坂出市から五色台(ごしきだい)周辺にかけて産出する、黒色で非常に硬く緻密な火山岩の一種です。打ち鳴らすと澄んだ「カンカン」という金属音を発するので、地元の人たちはもっぱら「カンカン石」とよんでいます。この音色は古代より人々を惹きつけ、石器時代には打製石器の材料として重宝されたそうです。明治時代にドイツ人地質学者ナウマンによって「サヌカイト(讃岐岩)」と命名されました。現在では、教育や音楽の分野でも使用され、特にサヌカイト製の音具はその美しい響きから人気を博しています。

サヌカイトへのお誘いがあって以降、Cは練習のために時折サヌカイトがある山に通い始めた結果、今ではマリンバに加えサヌカイトを披露する場も少しずつ増えてきました。そんななかで今回初めてサヌカイトのCDアルバムを制作しませんかというお話が飛び込んできたので、私も少しばかりお手伝いすることになりました。サヌカイトを演奏するときは、木琴と同じような形状に並べられたタイプもあれば、吊り下げ型のタイプなど形状は幾つかあります。そういえば私の中学校の校舎中庭にも吊り下げ型のサヌカイトがあったことを思い出しました。

今回のCDの収録楽曲は、既存の楽曲からサヌカイトで演奏しやすいタイトルを集めてきましたが、せっかくの初アルバムということもあり、オープニングとエンディングはオリジナル楽曲を入れたいとの意見がでました。そこで今回はオリジナル2作品「epilogue」、「prologue」も収録しました。ただ作曲で困ったのが、サヌカイトの音域と響きの問題でした。今回の使用楽器の音域は3オクターブほどしかありません。その中で伴奏を担う左手と、旋律を担う右手の取り合いを上手く成立させるのは結構面倒なのです。もっと音域が広ければ旋律の展開も広がるし、伴奏もしっかりした低音を響かせることが可能です。また一度打鍵すると響きが長く持続するため早いテンポの曲は演奏できないし、すぐに音が濁って聞こえてしまうという課題のクリアーも大変でした。それでも何とか作品は完成し、レコーディングも終え、CDジャケットも入稿し、先月遂に完成したCDが手元に届きました。そしてCD収録曲を引っ提げ、地元高松国分寺ホールでのサヌカイトリサイタルも好評裏に終わりました。ご縁があり「epilogue」は高松国分寺ホールのチャイムとしても使用していただいています。